平成28年2月25日(木)
改革岩手の佐々木順一でございます。
質問に入るに先立ち、先般、台湾南部で発生した地震により、尊い命を落とされた方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに、被害を受けられた皆様に心からお見舞い申し上げます。
同時に、東日本大震災津波から間もなく5年となりますが、改めて、犠牲になられた方々に対し謹んで哀悼の意を表します。また被害にあわれた皆様に心からお見舞い申し上げます。
それでは会派を代表し県政の基本問題について質問いたします。
1 さきの知事選挙の結果について
(1) 知事選挙の結果について
初めに、知事選挙の結果についてお伺いいたします。
普通選挙実施以来18回を迎えた先の知事選は、県政史上初の無投票当選となりましたが、当初から対立候補のいない一般的な無競争当選とは、形式的にも実質的にも性格を異にするものでありました。
すなわち、達増知事の県政運営に正面から異を唱える対立候補予定者が存在したことから二者択一の選挙が想定されていたこと、また、国会で審議中の安保関連法案の是非も争点の一つに位置付けられていたことから、選挙戦の構図が必然的に与野党対決型になっていたことなどがあげられます。
このような情勢を反映し、多くの県民は正面からの論争を期待していたにもかかわらず、前代未聞の突然の対立候補予定者の出馬撤回により、選挙は不成立に終わりましたが、一連の事態は、政治全般に計り知れない問題を投げかけました。
いうまでもなく民主主義社会において主権在民の根幹は選挙であります。
一方、主権者が政治に対し直接的に意思表示をする最大の機会は、基本的には選挙しかなく、選挙結果こそ民主的正当性の根拠となるものでありますが、達増知事の県政運営に対する審判や国政、県政全般にわたる政策全般に対する賛否等、選挙権を行使する機会が一方的な出馬撤回という理解不能な自己都合によって奪われたことは、筆舌に尽くしがたい極めて遺憾な出来事であります。
ついては、知事の三選が「無競争当選」ではなく、異例づくめの「無投票当選」という結果になったことをどのように受け止めておられるのか、一連の経緯を踏まえお伺いいたします。
(知事答弁)
佐々木(ささき)順一(じゅんいち)議員の御質問にお答え申し上げます。
まず、知事選挙の結果についてでありますが、議員御指摘のとおり、主権者にとって、選挙における投票が、主権の行使の最大の機会であります。
一方、日本国憲法にもうたわれている集会の自由、結社の自由、或いは言論の自由の行使による主権の行使というものもあると考えます。
昨年の知事選挙に向けては、そのような形での県民党的な大きな動きがあり、私の無投票当選につながったと思っております。
また、日本国憲法には、思想及び良心の自由もうたわれており、これらは、普段は内心にとどまり、表には出ないのですが、昨年の知事選挙に向けては、候補予定者への支持の事前の調査によってそれらが引き出され、現実政治を動かしたと分析することも可能と考えます。
(2) 県政運営への反映と自らの行動指針について
また、通常であれば、当選者は、得票数によって民意の程度を把握することができますが、今回は数量的把握は困難であります。当然のことながら白紙委任でも、全権委任でもありません。
形式的には「民意なき無投票当選」ということになりますが、今回の選挙結果を三期目の県政運営にどう反映されているのか、自らの行動指針を改めてお伺いいたします。
(知事答弁)
県政運営への反映と行動指針についてでありますが、先の答弁で述べましたように、昨年の知事選挙に向けて、岩手県民の民意は、投票以外の様々な手段で示されていたと言うことができ、そこで御支持いただきました「希望郷いわて・県民計画」や「東日本大震災津波復興計画」、そして、私の「希望マニフェスト」に沿った形で、三期目の県政運営を進めていきたいと考えております。
(3) 団体の態度表明について
引き続きお伺いいたしますが、激戦構図を反映し産業界を中心に態度を旗幟鮮明にする団体がこれまでになく顕著になったことも特徴の一つであります。
もとより機関決定に基づく団体意思の表明は、自由に活発に行われるべきものでありますが、一般的には団体の態度表明と選挙の結果が異なった場合には、それぞれの団体は、構成メンバーのためにも、ひいては県民のためにも、引き続き機関決定を維持するのか否かを含め総括し表明されるべきであります。
少なくとも社会的責任を伴う団体であるならば、適切な見識を明確に県民に示されることが肝要であり期待するものでありますが、このことについて心によぎるものがあればご披瀝願います。
(知事答弁)
団体の態度表明についてでありますが、私は、「希望郷いわて・県民計画」及び「東日本大震災津波復興計画」の遂行、そして、「希望マニフェスト」を掲げて選挙に臨み、県民党的な民意を受けて無投票当選となったと考えております。
県内の各団体が今、そのような私のスタンスに対して、どのようなスタンスを取るのかということについては、当然、各団体の自由ではありますが、県民的な関心がもたれているのではないかという趣旨の議員の御指摘は、そのとおりだと思います。
2 新有権者に対する主権者教育の在り方について
選挙に関連し、新有権者に対する主権者教育の在り方についてお伺いいたします。
公職選挙法の一部改正により選挙権が18歳まで引き下げられたことに伴い、現在、教育界を中心に様々な取り組みが行われておりますが、公選法全体が「禁止規定」によって支配されていることや教育基本法では「政治的中立性」が求められていることなどから、文科省や総務省の通知等はこれらを踏まえた、いわゆる「べからず集」となっております。
こうした技術的指導も必要ではありますが、最も大事な事柄は、民主主義の基盤となる主権者教育の充実に重点を置くことであり、特にも義務教育段階から行うことではないでしょうか。
地方教育行政制度の改正により、首長は総合教育会議を設け、教育の振興に関する施策の大綱を策定することが義務づけられましたが、この法改正を最大限活用し主権者教育の充実に取り組むべきと思いますがご見解をお伺いいたします。
(知事答弁)
新有権者に対する主権者教育の在り方についてでありますが、日本の将来を担う若い世代が選挙権を得て、政治や選挙への関心を高め、主体的に社会参画するようになることは歓迎すべきことであり、主権者教育に当たっては、政治参加の重要性や選挙の意義等を深く理解してもらい、政治への参加意識を醸成していくことが重要であります。
本県におきましては、総合教育会議の協議を経て大綱に位置付けた「いわて県民計画第3期アクションプラン」の教育分野においても、主権者教育に取り組むこととしたところであり、小中学校社会科、高校公民科の授業や模擬投票の機会などを通して、児童生徒の発達段階に応じ、計画的、かつ、継続的な指導の充実を図って参ります。
3 地方分権改革の現状認識と今後の進め方について
(1) 地方分権改革の現状について
次に、地方分権改革の現状認識と今後の対応についてお伺いいたします。
1995年の地方分権推進法の制定に続く2000年の地方分権一括法の施行に伴い、集権国家から分権型社会の実現をめざし、本格的構造改革が進められて参りましたが、現状は当初の熱気は完全に消え失せ、今や鳴り物入りの「分権改革」は「地方創生」に上書きされた感があります。
しかも地方創生の根幹を占める全自治体に策定を義務づけた「地方版総合戦略」は、実態的には、以前から地方が取り組んできているものであり、今さらという感がありますが、問題視しなければならない事柄は、短期間で作成を求める一方において、国が計画内容を査定し評価の対象となり得るものについては、追加的予算措置を講ずるといった枠組みになっていることであり、いわば、国の下に地方公共団体を置くという体質が露骨になってきていることであります。
そもそも地方分権改革の本命は、自主財源の充実のための国と地方の財源配分の見直しであり、それまでの財源保障は、地方交付税という一般財源で交付することが伝統的手法でありましたが、三位一体改革以降、国の予算配分方式は、これまで維持してきた一般財源主義・ルール配分主義から使途限定型の特定財源主義・裁量的配分主義に移行してきております。
いわば、分権改革の精神に逆行する取り組みが巧妙に行われてきており、これに従わなければ市町村は、必要な予算を調達できない仕組みが完成しつつある等、各自治体は国の行政末端機構としての性格を益々強めつつあるといっても過言ではないと思いますが、地方分権改革の現状をどう認識され今後この政治的課題にどのように向き合うお考えなのかお伺いいたします。
(知事答弁)
地方分権改革の現状についてでありますが、地方に対する規制の緩和に関しては、本県などからの働きかけによりまして、事業用地の迅速な取得を可能とする復興特区法の改正が行われて、復興事業が進むという成果がありました。
また、国は、昨年度、地方からの提案を募集する制度を導入して、今年度、本県からは、難病対策にかかる規制緩和など5件の提案を行いました。
これらは、いずれも実現の見通しとなっておりまして、地方分権改革は、そのような形で進んでいるものと認識しております。
一方で、地方の歳出の大半は、法令等で義務付けられた経費や国の補助事業でありまして、地方がより責任をもって積極的に地方創生等の課題に取り組んでいくためには、一層の地方税財源の確保・充実が必要であります。
このため、近接性・補完性の原則に基づいた事務権限の移譲や義務付け枠付けの廃止などによる、国と地方の役割分担の見直しを進めるとともに、それに見合った、国から地方への税財源の移譲など、地方自らの判断で地域の実情に沿った施策が十分展開できるよう、全国知事会等と連携し、国に対して強く働きかけて参ります。
(2) 地方創生の財源について
地方創生に本気で取り組むのであれば、自治体への思い切った権限委譲をはじめ、地方の自主財源の充実や規制緩和など地方分権改革に正面から取り組むことこそ、はるかに有効であることは論をまたないところでありますが、地方創生の根幹を占める新型交付金については、各自治体が異口同音に使い勝手が悪いと指摘しており要件緩和など自由度の高い制度設計を求めております。
完全ひも付きといわれる補助金制度、あるいは半ひも付きといわれる、例えば新型交付金や社会資本整備総合交付金等がある限り、緊急雇用創出事業の執行過程で起こった責任の所在が不明瞭な不祥事は根絶困難でありますし、逆にこの事業を自主財源で対応していた場合、責任の所在が明確になることから、今回と全く異なる展開になったことは想像に難くないところでもありますが、ご見解をお伺いいたします。
(知事答弁)
地方創生の財源についてでありますが、人口減少の要因や課題は地域ごとに大きく異なることから、地域の実情に応じ、地方の責任と創意による対策を講じることが重要です。
このためには、地方の自主性や主体性が最大限に発揮できるための十分な財源の確保が不可欠であり、昨年の政府予算要望において、地方の主体性に配慮した新型交付金の創設や制度設計について、県として、強く要望したところです。
また、この交付金に関しては、全国知事会議においても、既存の補助金の振替やタテ割の個別補助ではない包括的なものとすることや、対象分野や経費の制約を排除した弾力的なものとすることについて、大臣に直接提言を行ったところです。
今後においても、翌年度からの運用状況も踏まえ、必要に応じ、十分な予算の確保や更なる自主性の高い制度設計を働きかけて参ります。
4 平成28年度当初予算案について
(1) 平成28年度当初予算案の編成方針について
次に、平成28年度当初予算案についてお伺いいたします。
明年度は、第二期本格復興期間としての総仕上げの年であるとともに、先般公表された「いわて県民計画」の「第3期アクションプラン」を推進する実質的初年度の年でもあり、さらに、昨年策定された「岩手県ふるさと振興総合戦略」に基づく「岩手で働く」「岩手で育てる」「岩手で暮らす」、この三本柱の実現のため、人口減少対策を中心に各般にわたる施策を展開し実効性を確保しなければならない極めて重要な年でもあります。
一方、本県の財政事情は、社会保障関係経費の増嵩に加え、県債の償還が多額にのぼることや財源対策三基金の減少など、依然として厳しい状況が当分の期間続くことが予想されておりますが、あらゆる手段を駆使し必要財源を確保し「復興」、「希望郷いわて」の実現と「ふるさと振興」の着実な前進にすべてを傾注することが知事の使命でもあります。
ついては、知事就任三期目における実質的初年度にあたる平成28年度当初予算案をどのような考えに基づき編成し、かつ重点化を図ったのかお伺いいたします。
(知事答弁)
平成28年度当初予算案の編成方針についてでありますが、平成28年度当初予算は、東日本大震災津波からの復興事業を着実に進め、ふるさと岩手の「本格復興」を成し遂げ、「いわて国体・大会の成功」に取り組むとともに、「ふるさと振興」等を推進する予算として編成しました。
復興予算については、第2期復興実施計画に掲げる「参画」「つながり」「持続性」の視点を引き続き重視しつつ、計画に掲げた事業を確実に成し遂げるための予算を措置しました。
ふるさと振興については、今般策定したいわて県民計画「第3期アクションプラン」を着実に進めるとともに、「岩手で働く」「岩手で育てる」「岩手で暮らす」などの取組を総合的に展開するための予算を措置しました。
また、「いわて国体・大会の成功」や「ILCの実現」など、復興を後押しする取組を推進するとともに、国の補正予算を踏まえた平成27年度2月補正予算と一体的に、TPP対応を見据えた本県農林水産業の体質強化や地方創生などに取り組んでいくこととしています。
本県財政は、公債費が依然として高い水準にあるなど厳しい状況にありますが、限られた財源の有効活用に努めるなど創意と工夫により、「復興」と「ふるさと振興」にしっかりと取り組んでいくための予算に重点化を図ったところです。
(2) 中期財政見通しについて
なお、平成28年度予算から復興財源の一部負担が生ずることになりますが、明年度当初予算編成における財源確保と調整はどのように行われたのか、中期財政見通しはどうなるのか、計画策定の見通しも含めお伺いいたします。
(知事答弁)
中期財政見通しについてでありますが、昨年6月の国の方針決定により、一部の復興事業について自治体負担が拡大されることとなり、本県においては、平成32年度までの5年間で、新たな負担が計73億円程度生じるものと試算したところです。このうち、平成28年度当初予算においては、県負担の拡大分は約25億円と見込まれ、県債を約24億円発行して対応したところです。
今後も、社会保障関係費の増加などにより厳しい財政状況が続くと見込まれ、中長期的な視点に立った財政運営を行っていく必要があることから、地方財政をめぐる様々な状況の変化や、国が策定する骨太の方針等を踏まえ、平成28年度中に新たな中期財政見通しを作成したいと考えています。
5 震災復興について
(1) 国の復興方針の見直しについて
次に震災復興についてお伺いいたします。
政府は、五年間にわたる集中復興期間の終了に伴い、後期五か年の復興・創生期間を「十年間の復興期間の総仕上げに向けた新たなステージ」と位置付け復興の基本方針の見直しを行っておりますが、国の復興推進委員会の委員でもある知事は、一定の評価をされたとお聞きしておりますけれども、現時点で復興庁の設置が十年限定であることや「総仕上げ」という語感の響きも手伝い、被災地では「政府は、後五年間で復興から手を引くのか」などの憶測を呼んでおります。
ついては、議論の拡散を避け目的意識を一つにするためにも、国による「十年間の復興期間の総仕上げに向けた新たなステージ」についてはどのようにお考えか確認をさせていただきます。
(知事答弁)
国の復興方針の見直しについてでありますが、現在示されている骨子案においては、28年度からの復興・創生期間は、これまでの5年間とは異なるステージということが強調されており、本県の復興が未だ道半ばの状況の中で、取組の継続性が危惧されましたことから、1月に行われた復興庁と県、市町村との意見交換におきましても、私から、復興の進捗は地域によって異なっている状況もあり、被災者の心と体の健康の問題やハード事業等について、これまでと同様の切れ目のない対応を要望したところであります。
一方で、心のケアなどの取組を継続して実施していくことについては記載がされており、また、国が新たなステージと表現することによって、復興に対し全国の皆さんの関心を改めて高めてもらう効果も期待されるということに鑑み、今回の骨子案については、一定の評価を行いつつ、さらに被災地の実態に即して、その内容をより充実させていくことが重要と考えております。
(2) 第3期復興実施計画について
引き続きお伺いいたしますが、知事演述では第二期の本格復興期間の最終年度を迎える本年を「本格復興完遂年」と位置付け、平成28年度内の災害公営住宅の9割完成や漁港の復旧完了、地域に根差したコミュニティーの再生、さらには内陸に避難されている方への相談体制の充実などに取り組むことを強調するとともに、復興をさらなる展開へ導く第3期復興実施計画の策定を表明されましたが、今なお、2万2千人の方々が仮設住宅での不自由な暮らしを余儀なくされております。
中でも恒久的な住まいの確保は、引き続き最優先課題になっておりますが、特にも持ち家による自力再建を目指す方々にとって新築工事単価の上昇は、迷いを生じさせる大きな要因になっており、速やかな対策が求められるところであります。
しかしながら、住宅再建はあくまでも通過点であり、住宅の復興と合わせ被災者の生活再建、すなわち働く場の確保につながるものにしなければならず、今進められている復興まちづくりが生活再建の足掛かりとなるよう複合的な取り組みが求められるところでありますが、第3期復興実施計画はどのような考え方に基づき策定されるのか、重点化される事業や目標値をどう定めるのか、また、国の復興計画は残り五年となっておりますが、本県の計画は三年で終了する予定になっておりますので、この調整をどう図るのか、それぞれご見解をお伺いいたします。
(知事答弁)
第3期復興実施計画についてでありますが、第3期復興実施計画は、平成28年度までの復興の取組を踏まえて、平成29年度と30年度の2年間において復興を更なる展開に導くような内容にしたいと考えております。
具体的には、社会資本の整備、コミュニティやなりわいの再生などの復興を引き続き進めるとともに、将来にわたって持続可能な三陸地域を目指した取組も併せて進めていく必要があると考えておりまして、盛り込むべき事業や目標値については、復興委員会や市町村などとも十分に意見交換をしながら、来年度明らかにして参りたいと考えております。
また、国と県との復興期間の関係につきましては、本県の復興の進捗状況等を検証しながら、その対応について検討して参りたいと考えております。
(3) 国家レベルの事業について
なお、国の基本方針の見直しの中には「東京オリンピック・パラリンピックに向けた連携」が位置付けられておりますが、これに匹敵する2019ラグビーワールドカップや地球的規模のILCについては検討対象にも上っておらず極めて残念であります。
ついては、復興の象徴そのものといえるこれら国家レベルの事業について、基本方針に明記されるよう、あるいはこれに準ずる支援対象となるよう、政府に強く申し入れるべきと思いますがいかがでしょうか、合わせてご見解をお伺いいたします。
(知事答弁)
国家レベルの事業についてでありますが、ラグビーワールドカップ2019については、被災地である釜石市でも開催され、また、「復興五輪」と位置付けられた翌年の東京オリンピック・パラリンピックに向けた機運醸成と、被災地の復興の姿を世界に発信する機会として大きな役割を果たすことが期待されます。
また、ILC(国際リニアコライダー)については、福島のイノベーション・コースト構想と並ぶ、被災地の発展基盤の強化にもつながる先進的な取組として、復興に大きく寄与するものでありますので、新たな復興の基本方針に盛り込むように、1月に開催された復興推進委員会をはじめ、機会を捉えて意見を述べてきたところであります。
今後においても、今申し上げたような本県に関わる国民的な事業が、新たな復興の基本方針に盛り込まれるよう、国に対して引き続き働きかけを行って参ります。
6 地域医療基本法(仮称)の制定について
次に、本県が政府に制定を求めている仮称・地域医療基本法についてお伺いいたします。
県は、平成21年度から医師の地域別・診療科別の偏在の解消に向け、国に対し地域医療再生のための総合的な政策の確立の一環として、保険医に対する医師過少地域医療機関への勤務の義務付けを中心とした地域医療基本法の制定を要望されております。
22年度には県独自に基本法の草案を作成、25年度には東京都内において「地域医療再生シンポジウム」を開催するとともに、昨年度は知事と有識者による対談を行うなど法制化に向け情報発信に努められており、基本法の必要性については医療関係機関などからは一定の評価が寄せられているものと承知しております。
また、国においても「保健医療2035」の中で医師の偏在等の解消に向けて資源の適正配置を行う必要性を記載するなどの動きも見られます。
しかし、かつては県の要望に対し、霞が関レベルでは「職業選択の自由」という憲法解釈を盾に極めて慎重な姿勢であったとお聞きしております。
似たような霞が関の発想は東日本大震災の時にもありました。
すなわち、非常時下にもかかわらず憲法上の私有財産権を盾に被災した土地の処理を既存の法律に委ねたことであり、この判断ミスが結果的に非現実的な膨大な作業量を現場に強いることになり、復興を遅らせた最大の要因となったことは紛れもない事実であります。
国民が危機的状況にあっても霞が関は、頑迷に狭い憲法解釈を盾に国民に平然と犠牲を求めるようなことを、そもそも日本国憲法は想定しておらず、この独善的解釈は霞が関だけに通用する異質な解釈であります。
無理筋の解釈改憲によって昨年成立した安全保障関連法とは、全く性質を異にするものであり、この問題こそ憲法解釈を踏まえた、政治判断の問題であると思いますが、地域医療基本法の法制化の実現に向け今後どのような取り組みを行っていかれるのか、また、日本国憲法は、公共の福祉に反しない限り公権力の干渉から個人の自由の領域を守る防波堤として存在するものと思っておりますが、この施策について、職業選択の自由と憲法との関係をどのように考えているのか、お伺いいたします。
(知事答弁)
仮称地域医療基本法についてでありますが、その法制化を実現するためには、国全体で医師の計画的な養成と適正配置に取り組むことを主眼とする地域医療基本法の趣旨やその必要性について、国や国民に広く理解を求めて、制定に向けた機運を醸成していくことが肝要であると認識をしております。
県では、このような認識のもと、これまで政府予算提言要望や首都圏におけるシンポジウムの開催、また、有識者との対談等を通じまして、その必要性を提言するとともに、情報発信に努めて参りました。
今年度におきましては、PR動画のインターネット配信や、また、全国紙を活用した情報発信等の取組を進めているところでありまして、引き続き様々な機会を通じて、国への提言や国民的な議論に向けた情報発信等を行い、その実現に向けて取り組んで参ります。
また、地域医療基本法に基づく医師の適正配置などの具体的な方策と、日本国憲法における職業選択の自由との関係についてでありますが、これは、一概に憲法違反とは言えないと考えられ、学識経験者の意見などを踏まえて、職業選択の自由をはじめとする基本的人権にも配慮をしつつ、公共の福祉にかなう手法を検討してきたところであります。
日本国憲法により、すべての国民に保障された生命、自由及び幸福追求の権利を守るためにも、国民が、居住する地域において必要な時に適切な医療を受けることができるよう、このように地域医療基本法の法制化に向けて取り組んで行く必要があるものと考えております。
7 ILC計画と世界ジオパーク認定取得について
(1) ILCの誘致について
次にILC計画と世界ジオパーク認定取得についてお伺いいたします。
政府のILC誘致の判断は平成29から30年頃と見込まれていることから、明年度は建設候補地として所要の準備を着実に進めていかなければならない極めて重要な年になります。
県は、北上山地が事実上、世界唯一の候補地となった平成25年以降、本格的な取り組みに着手、例えば元高エネルギー加速器研究機構長の鈴木厚人氏を県立大学学長に迎え入れるとともに、本年2月には超党派の国会議員によるリニアコライダー国際研究所建設推進議員連盟の訪米に鈴木学長や県ILC推進協議会の谷村会長らが同行し日米の協力関係構築を後押ししたほか、誘致実現に伴う産業分野別の経済波及効果を分析するための研究機関の調査にも着手、本年12月には「リニアコライダー国際会議2016」の盛岡開催も内定するなど機運醸成の拡大に着実に努められてきており評価するものであります。
ついては、「国際科学技術創造立県・いわて」の到来が現実味を増しつつある中にあって、今回の関係者の訪米で得られた成果をどのように把握され、これからの活動に反映されようとしているのか、また、明年度は、政府を含め関係機関に対し誘致実現に向けどういう行動を取って頂くことを期待しているのかお伺いいたします。
(知事答弁)
ILC、国際リニアコライダーの誘致についてでありますが、 先般の超党派の国会議員で構成される議員連盟の訪米では、ILCを含む日米の今後の科学技術の連携を協議する場として、初めてフォーラムが開催されました。
そして、次回のフォーラムは、今年の秋頃、日本での開催を目指すと聞いておりまして、ILCの実現に向けて、大きく前進していると考えています。
また、今回のフォーラムにおいて、県立大学の鈴木学長や岩手県国際リニアコライダー推進協議会の谷村(やむら)会長らから、建設候補地である岩手県や東北の熱意を国内関係者らとともに、米国側に直接伝えることができたことは、我が国が一つになって取り組む姿を示したものであり、大きな成果であると認識しています。
昨年6月、国の有識者会議は、国際的な経費分担が必要不可欠などの提言を行ったところでありまして、今後、文部科学省には、これら課題の解決に向けて、行動していただくことを期待いたします。
県としては、ここ1、2年が極めて重要な期間と捉えて、今後開催されるフォーラムや、また、今年12月、盛岡市で開催される国際的な会議などあらゆる機会を通じて、積極的に要望活動や情報発信を行い、また、ILCによる経済波及効果の試算や受入環境の具体的検討なども進めて、政府のILC誘致の決断を促して参りたいと思います。
(2) ILC計画と世界ジオパーク認定取得について
世界レベルのテーマとして本県では「世界ジオパーク」の認定取得の課題を抱えております。
知事は地元紙のインタビューで「日本ジオパークの認定にあたり諸課題を指摘されたことから、これらの諸課題を解決し世界認定を目指すのは明年以降になる」との見通しを示されましたが、復興に全精力を傾けている関係自治体の中にはジオパーク関連作業に当てる余力もないことから、体制づくりに温度差があるようにも見受けられるところであります。
ついては、各自治体の本格的協力の取り付けと指摘された課題処理のため明年度はどのような取り組みを行うのか、特に復興のその先にあるいわてづくりに向け県民が希望を持って歩みを進めていただくためには、努力目標として概ねの申請の時期を明示することも必要ではないでしょうか。
ILC計画と世界ジオパーク認定取得が一定の期間内に決着することこそ、文字通り創造的復興に資する最大かつ最善の有効策になるものと思いますがご見解をお伺いいたします。
(知事答弁)
ILC計画と世界ジオパーク認定取得についてでありますが、三陸ジオパークの取組は、沿岸被災地における復興のシンボルの一つであり、ILCとともに、三陸創造プロジェクトの重要な柱と位置付けています。
平成25年9月の日本ジオパーク認定の際には、日本ジオパーク委員会から、ジオガイドの養成や情報発信の一層の強化等について指摘を受けておりまして、三陸ジオパーク推進協議会を中心に、ガイドのスキル向上やホームページの充実等に取り組んでいるところです。
さらに、将来的な世界ジオパークへの申請も視野に入れまして、世界ジオパーク活動経験者の招へいによる事務局体制の強化やパンフレットや案内解説板の多言語化、外国人向け研修会の開催等にも取り組んできています。
しかしながら、世界ジオパークの認定を目指すためには、地球科学分野等の専門人材や外国人向けガイドの養成等を含む運営体制の構築、核となる受入れ施設の整備など、ソフト、ハード両面にわたり、なお多くの課題があるものと認識しています。
県としては、こうした現状を踏まえ、まずは、平成29年度に行われる日本ジオパーク認定の再審査に向けた準備を着実に進めるとともに、世界ジオパークの認定に向けて、今後、必要な調査や検討を進めながら、関係市町村等との合意形成が図られるよう、議論を重ねて参ります。
8 TPP問題について
(1) 最終合意について
次にTPP問題についてお伺いいたします。
「聖域なき関税撤廃を前提とする限りTPP交渉参加には反対」が与党の立場であるにもかかわらず、安倍総理は、平成25年3月、米国において交渉参加を表明、これを受け国会は、◎聖域5品目について引き続き再生産可能となるよう除外または再協議の対象とすることや◎国民への十分な情報提供を行うことなど8項目を決議しておりましたが、国民への情報開示はほとんどないままに、政府は一直線に国会承認に突き進んでおります。
かつての「よらしむべし、しらしむべからず」の古典的お役所主義の復活ここに極まれりの感を強くするものでありますが、コメの新たな輸入枠が設けられ牛肉も大幅な関税削減を強いられるなど全農林水産物の関税撤廃品目が八割、国会決議で聖域とした重要五品目でさえ細目で三割が削減の対象に上るなどかつてない高水準にわたる農産物の市場開放となっている最終合意が、果たして国会決議に沿うものかどうか、政治的正当性はあるのか、進め方が妥当なものであるのかどうかも含めご見解をお示し願います。
(知事答弁)
TPP協定交渉の合意についてでありますが、TPP協定は、本県の基幹産業である農林水産業をはじめ、県民生活や経済活動の幅広い分野に大きな影響を及ぼすことが懸念されております。
このため、交渉に当たっては、平成25年4月の衆参両院農林水産委員会における決議も踏まえ、十分な情報開示と説明を行い、国民的議論を尽くした上で慎重に判断することなどについて、国に対して、繰り返し要請をしてきたところでありますが、そうした説明や議論が不十分なままに、TPP協定の署名に至ったことは、残念であると考えております。
県民の皆さんからは、未だ影響を不安視する声が聞かれていることから、引き続き、詳細な影響分析や対策など全容を早期に明らかにし、国会を中心に十分な国民的議論に付されるよう、政府に求めて参ります。
(2) 影響試算について
引き続きTPP問題についてお伺いいたします。
政府は農林水産業などへの影響試算を公表しましたが、その内容は、農林水産生産額は1300億円~2100億円減少するが様々な対策で食料自給率も下がらず、農家所得も確保され再生産は維持できるというのが結論となっております。
果たして、試算の前提が正しいのか、農業への影響を過小に見積もり政策効果を過大に見越したとしか思えず、多くの県民も著しい不満と不安を抱いているところでありますが、政府は様々な国民の要求に応える意思は全くなく「TPPの影響は軽微で国内対策で十分、問題なし」と強調するばかりであります。
そもそも、恣意的かつ意図的な試算の前に、政府は、直接的効果だけの試算結果を示すべきであり、その上で、例えば、生産コストや関連産業に及ぼす影響、就業者に与える影響、さらには多面的機能の喪失など様々な視点に基づく試算を公表するなど国民に幅広い判断材料を示すべきでありますが、残念ながらこれらの試算については完全拒否し続けております。
ついては、県において独自に先ほど列挙いたしました分野別の詳細な影響試算を行い県民に正しい情報提供を行うべきと思いますが、いかがでしょうか。
他県では、滋賀県や和歌山県など独自に試算、公表しているところや識者の協力のもとにJAなどが中心となりこれらの試算を公表しているところもあることから、昨年立ち上げました県のTPP協定対策本部のもとでぜひ試みていただきたいと思いますが、ご見解をお伺いいたします。
(知事答弁)
影響試算についてでありますが、県では、国のTPP協定の経済効果分析をもとに、本県農林水産物の生産額への影響を試算し、生産額が約40億円から73億円減少するとの結果を公表しました。
しかしながら、国は、試算に当たり、生産額は減少するものの、国内対策により所得が確保され、生産量が維持されることを前提としており、実際の本県への影響額はこれより大きくなるものと想定されております。
他県では、一部の農業関係団体等において、国が何ら対策を講じなかった場合等の影響額を公表していますが、影響額は、試算の前提条件により大きく異なることなどから、農業団体の意向も踏まえながら、今後検討を進めて参ります。
(3) 県TPP協定対策本部について
また、県のTPP協定対策本部の活動について確認させていただきますが、国会批准の前と後では、政府に求める内容は異なると思いますが、この点についてはどのように整理され何に力点を置いて対策本部は活動されるのかお伺いいたします。
(知事答弁)
TPP協定対策本部の活動についてでありますが、県では、これまで、TPP協定の内容について十分な説明がなされ、国会を中心に十分な国民的議論に付されるよう、政府に求めつつ、国の補正予算も踏まえ、本県農林水産業の体質強化策等について検討を進めてきたところであります。
国においては、本年秋を目途に、農林水産業の成長産業化を一層進めるために必要な戦略等について政策の具体的内容を詰めることとしており、今後、こうした協定の発効を想定した国の検討状況等を注視し、対策本部において情報の共有を図りながら、農業者等が安心して経営を継続できるよう、国に対し、万全な対応を強く求めていくとともに、全庁を挙げて必要な分析や対策の検討等に取り組んでいきます。
また、国会の承認後においては、県の対策本部としても、農林水産業全体としての必要な対策などを打ち出すとともに、国に対し、具体的な施策を迅速に実行するよう強く求めて参ります。
9 いわて国体・全国障害者スポーツ大会について
最後に岩手国体・全国障害者スポーツ大会についてお伺いいたします。
先般開催のスケート・アイスホッケー競技会に引き続きスキー競技会も開催され完全国体がスタートいたしましたが、二つの開始式における工夫を凝らしたオープニングセレモニーは好評を博するとともに、両競技会も大きなトラブルもなくおおむね順調に行われるなど、復興に向かう本県の姿や復興支援への感謝の気持ちが来県された多くの方々の心をとらえたものと思います。
一方、本県選手団は、スケート・アイスホッケー競技で二巡目国体で最高の125点を獲得、総合8位の成績を収めるとともに、続くスキー競技でも53点を上積みし、冬季大会終了時点で総合4位となるなど、県が目標に掲げている天皇杯順位8位以内に向け高位置につけていることは、偏に選手団をはじめ関係者の努力の賜であり、改めて選手団の栄誉と関係者の努力を称えたいと思います。
7か月後には、冬季大会をはるかにしのぐ規模で国体本大会と全国障害者スポーツ大会が開催されることになりますが、両大会の運営などに携わるボランティアの確保は目標を達成したものの、企業協賛につきましては概ね目標に近づきつつある一方で、募金については1月末現在で53%にとどまっており、両大会が成功を収めるためにはさらなる県民意識の高揚を図る必要があります。
名実ともに県民総参加のもとで大会を成功させ、県民等しく達成感を共有していただくためには、県民一人一人が様々な形で両大会に参加していただくことが求められるところであります。
ついては、両大会成功に向け知事は、すべての県民に改めて協力を呼びかけるべきと思いますがいかがでしょうか。ご見解をお聞きし代表質問を終わります。
ご清聴ありがとうございました。
(知事答弁)
いわて国体、全国障害者スポーツ大会についてでありますが、冬季大会の各競技会での岩手県選手団の活躍は、県民に感動と希望をもたらし、式典での子どもの声援や各競技会場でのおもてなしによりまして、全国の皆様に復興支援への感謝を伝えることができるなど、完全国体の幕開けは県民や大会関係者の心に深く刻まれるものとなりました。
選手・監督が合わせて約2万8千人、来場者数が約93万人と、冬季大会の十倍近い規模となることが見込まれる秋の国体本大会及び全国障害者スポーツ大会におきましても、県民との協働による開かれた大会を目指し、運営ボランティアや花いっぱい運動、競技応援などの県民運動への参加、宿泊施設・土産店やバス・タクシーといった交通機関での来県者への心のこもった対応などにより、岩手の魅力や感謝の気持ちを伝え、「130万人で参加宣言」や「文化プログラム」、また、「国体・大会プラス」といった取組の展開にもよりまして、更なる意識の醸成と盛り上げを図ってまいります。
昭和45年国体の開催によって、岩手県民に自信と誇りが生まれ、それが岩手の発展の原動力となってきたと考えます。希望郷いわて国体・希望郷いわて大会においても復興のシンボルとして震災を乗り越えて、新たな岩手を創り上げる大きな力となるように、両大会の成功に向けて、今後ともオール岩手で全力で取り組んでまいります。