平成27年2月25日(水)
希望・未来フォーラムの佐々木順一でございます。
1 地方創生と人口減少対策について
(1)これまでの国の地方振興策について
初めに、政府の地方創生と人口減少対策に係る諸問題についてお伺いいたします。
地方振興に係る取り組みは、これまで国、地方を問わず何度となく取り上げられて参りましたが、最初は、一九七〇年代の大都市部の知事たちが唱えた「地方の時代」という、地域主義を主張する政治的メッセージであったと思います。
本県においては、自民党公認で当選された中村知事が唱えた「地方主導型の県政」が最初でありますが、いずれも中央集権に対する地方からの反論であったことは論を待たないところであります。
以降、政府レベルにおいても、大平内閣の「田園都市構想」、竹下内閣の「ふるさと創生資金事業」をはじめ、歴代内閣はその都度「地域活性化」、「地域再生」、「地方分権」、あるいは、直近では民主党政権下の「地域主権」等々、名称を変えながらも地方重視の政策を展開してまいりましたが、いずれの取り組みも残念ながら、中途半端な状態で終わっており、結果として残されたものは、国と地方の財政の悪化と自治体の疲弊感のみであります。
今日、様々な要因により地域社会が崩壊の危機に瀕している今だからこそ、過去をしっかりと振り返り、これまでの取り組みの検証を行い、教訓とすべき事項などから真剣に学ぶ必要があると思います。
特にも成功事例から学ぶのではなく、失敗事例から学ぶという謙虚さが何よりも求められると思いますが、知事はこれまでの国の地方振興策をどう総括されているのかお伺いいたします。
(知事答弁)
国のこれまでの地方振興策についてでありますが、
昭和30年代以降の高度経済成長に伴い、本県をはじめ、地方から大都市に向けて若者を中心に大きな人口移動が起こり、大都市において過密化が発生する一方で、地方においては過疎化が進行してきたところ。
この間、国においては、こうした大都市と地方の不均衡を是正するため、昭和37年の「全国総合開発計画」から、平成10年の「21世紀の国土のグランドデザイン」に至るまで、5つの総合開発計画を策定し、国土の均衡ある発展等を目指した取組が進められてきたところであるが、依然として東京一極集中などの課題は解消されていないところである。
我が国が将来にわたって安定的に発展していくためには、地方が活性化し、大都市への人口流出を食い止めることが必要である。
国においては地方を重視した経済財政政策を強力に推進するなど、実効性のある施策を求めたいと考える。
(2)政府の地方創生に対する見解について
引き続きお伺いいたしますが、政府の地方創生の骨子は、人口減少の歯止めや活力ある社会を維持するため数値目標を盛り込んだ総合戦略を定めたことや政府の総合戦略を参考に都道府県に対しても数値目標の設定を含め総合戦略の策定を義務づけるとともに、策定検討期間を平成二七年度末までに限定、財源支援も評価される計画に対しては手厚く保障すること等でありますが、株価を維持するための成長戦略に組み込まれた感のある今回の地方創生は、目的達成のための手段という色彩が強く極めて遺憾な取り組みと言わざるを得ません。
具体的例を申し上げますと、例えば、あまりにも検討時間が短いこと、地方の立案を中央が審査する事前申請方式であること、地域事情に関する適切な判断が中央政府において下せるのか、はなはだ疑問が残ること、財源措置についても、本来であれば地方の創意工夫を最大限発揮させるため一括交付金とすべきところでありますが、地方が立案した計画を政府が評価したうえで交付する仕組みになっていること等、上から目線の地方創生であることは否めず、我々が一貫して主張してまいりました国と地方は対等という地方分権の理念にも逆行する取り組みであります。
また、地方にミニ東京をつくる恐れのある「連携中枢都市圏構想」や「コンパクトシティ」も対応を間違えば周辺地域の利便性の低下や、さらなる人口減少をもたらすことになり、結局、都市全体の人口減少の負のスパイラルに陥る可能性があります。
さらに、国交省の中山間地域における「小さな拠点」構想もふるさとの存続を否定する恐れが多分にあります。
加えて、文科省は、小中学校の学校区の範囲をこれまでの距離基準にスクールバス利用を前提に「通学一時間以内」を加えましたが、これも地域文化の継承やコミュニティーの拠点を失うことは明白であり、中山間地域を多く抱える本県としては歓迎できるものではないと思います。
これらは、もっぱら財源、施策、人を集約させることを目的としており、こうした誘導策は自治の精神を無視した効率重視の近視眼的な取り組みであると指摘せざるを得ません。
今申し上げました例示は、日本全体の人口の維持を目的とした日本創成会議による自治体消滅を踏まえた取り組みであると推察いたしますが、そもそも日本創成会議の「人口減少社会が自治体消滅を招く」という論理展開は、極論すれば「いつかは日本の人口がゼロになる」と言っていることと同じであり、「自治体消滅論」を前提とした今回の国の「地方創生」を目的とした国の政策体系は極めて問題であります。
また、新たな地方を作り出すという印象の強い「地方創生」という用語を選択したことも問題であります。
恐らく「故郷がなくなってもよい」と考えている県民は一人もいないと思いますが、そうであるとするならば、今のコミュニティー、現在の自治体をどうすれば将来も維持できるのかということを出発点とすべきであり、名称も「地方創生」ではなく「地方再生」とすべきであります。
様々問題点を指摘してまいりましたけれども、各般にわたる政府の地方創生に対する知事の率直なご見解をご披瀝願います。
(知事答弁)
政府の地方創生に対する見解についてでありますが、
昨年末、国が策定した総合戦略では、東京一極集中の流れに歯止めをかけるための地方移住の推進や企業の地方拠点強化、企業等における地方採用、就労の拡大、地方大学の活性化などに取り組むとしているところ。
また、若い世代の結婚・出産・子育ての希望を叶(かな)えるため、若者雇用対策の推進や子ども・子育て支援の充実、ワークライフバランスの推進などに取り組むとしているところ。
こうした国の取組と合わせ、地方における人口減少に対する取組を支援するため、新たな交付金を創設したほか、平成27年度地方財政計画において、1兆円のまち・ひと・しごと創生事業費を確保することとするなど、一定の評価をしているところ。
国に対しては、今後、今般の総合戦略で掲げた施策の確実な実行に加え、地方を重視した経済財政政策の実施を、強く求めたい。
(3)小中学校の学校区の範囲の基準について
この際教育長にお伺いいたしますが、小中学校の学校区の範囲に「通学一時間以内」が追加されたことは、文教政策と地域政策の両分野において様々な影響を及ぼすことが予想されます。
現在、小規模校の取り扱いは、県民の関心事の一つにもなっておりますので、本県におけるこの基準の取り扱いについてお尋ねいたします。
(教育長答弁)
小中学校の学校区の範囲の基準についてでありますが、
学校区は、政令(「義務教育諸学校等の施設費の国庫負担等に関する法律施行令」)により、小学校は概ね4キロメートル以内、中学校は概ね6キロメートル以内という通学距離の基準が定められております。
しかしながら、児童生徒の実際の通学状況を見ますと、スクールバスや路線バスなど、多様な交通機関が通学に活用されていることから、本年1月に、文部科学省が示した「公立小学校・中学校の適正規模・適正配置等に関する手引」におきましては、政令で定める通学距離に加えて、概ね1時間以内という通学時間の基準が新たに示されたところです。
また、学校の配置にあたりましては、適切な交通手段が確保でき、かつ遠距離通学や長時間通学によるデメリットを一定程度解消できる見通しが立つということを前提としまして、設置者である市町村が、地域の実情や児童生徒の実態に応じて、総合的に判断することが必要とされております。
県教委といたしましては、児童生徒の減少が進む中で、学校の活性化や教育水準の維持向上などを図る観点から、学校統合も一つの選択肢とは考えますが、学校配置の見直しを具体的に検討する場合におきましては、通学距離や通学時間も含め、児童生徒の教育条件の改善の視点を中心に据えるとともに、学校が地域コミュニティの中核的な機能を有している場合も多いことから、市町村教委に対して、保護者や地域の十分な理解と協力のもとに丁寧に進められるよう、助言しているところであります。
(4)本県の地方再生の取組について
次に県の取り組みについてお伺いいたします。
県においては、昨年六月に人口問題対策本部を設置し様々な取り組みに着手されておりますが、人口減少などに伴う地方再生は、これまで停滞してきた地域のありようを変えることになるとともに、実を結ぶまでには二十年~三十年という気の遠くなるような時間を要することから、人口減少に立ち向かう視点と課題の整理を踏まえた当面の対策とともに、中長期に及ぶ指針や概要計画の策定が求められるところであります。
そのためにも、例えば、自治体やコミュニティーの在り方を踏まえた岩手の将来像をどう描くか、地域ごと、課題ごとの当面の目標値を含め最終的な努力目標をどう定めるのか、あるいは、人口の自然減、社会減に具体的どう立ち向かうのか、そのための手段をどうするのか、また産業振興や就業の場の確保をどう進めるのか、さらには、政府が示している地方創生の取り組みへの対応をどうするのかなどを具体的に整理するとともに、これをわかりやすく県民に説明し人々のやる気を喚起するとともに各分野における人材の育成にも意を用いる必要があります。
特にも、政府方針の問題点については、県としても改善、再考を求めつつも、国の財源や制度を活用しながらあらゆる施策と財源を総動員し、岩手ならではの地方再生と人口減少対策に冷静に取り組む必要があります。
一方、知事は震災復興に取り組むに当たり、その基本姿勢を「故郷を消滅させない」、あるいは宮城県の集約重視ともいえる「中央・民間主導型の復興」とは対照的に「地域合意重視のなりわい型の復興」に置いて各般にわたる政策を進められておりますが、私は、この見識は人口減少対策と本県ならではの地方再生対応への先取的な着手として評価するものであります。
人口減少社会の中にあって、市町村の行政機能は徐々に低下を余儀なくされますが、人口減に歯止めをかけ現在の基礎自治体を将来も維持するとなると、残る手段は、市町村の広域連携の道しかないと思いますが、先ほどの指摘事項を含め知事は、どのように市町村を支援していくこととしているのかお尋ねいたします。
(知事答弁)
本県の地方再生の取組についてでありますが
人口減少社会においては、経済規模の縮小による税収の減など、今後、市町村によっては、単独で行政サービスの水準を維持していくことが困難となる場合も想定される。
こうした市町村がそれぞれの情況に応じて、合併や市町村間の連携、あるいは県との連携など、様々な選択肢の中から最も適した方法を自主的に選択しながら、基礎自治体としての役割を果たしていくことが重要であると考えている。
一方、東日本大震災以降、県や内陸市町村が沿岸市町村を積極的に支援するなど、新しい連携も先行的に行われてきており、このような自治体間の連携の取組は、復興に止まらず、人口減少等から生ずる課題に対応するためにも有効であると考えている。
県としては、震災復興における連携の状況や現在進みつつある定住自立圏の取組を参考としながら、個別市町村と意見交換を進めており、今後、持続可能な行政サービス提供体制のあり方について検討を進めて参る。
(5)移住・定住施策の基本的考え方と平成27年度の施策展開について
また、本県における人口減少問題への対応については、先に公表された「人口問題に関する報告」の中に、総合的な対策の必要性が述べられております。
中でも、人口の社会減対策の柱として、首都圏などの都市部に居住する方々の本県への関心を高め、移住を支援していくことは重要な施策の一つであると考えます。
加えて、発災後、都市部の若者が被災地支援に訪れ、そのまま定住するなど、若者が都市部から地方へ回帰する傾向が強まっているという指摘もあります。
ついては、移住・定住施策の総合的な推進に関する基本的な考え方と平成二七年度には、いかなる施策を展開されようとしているのかお伺いいたします。
(政策地域部長答弁)
移住・定住施策の推進についてでありますが、
本県が持つ魅力を広く発信し、交流人口の拡大を図りながら、岩手ならではの移住施策を推進することは、人口の社会減を食い止める施策として、重要であると認識しております。
このため、官民協働による定住・交流施策の促進に向けて、「いわて定住・交流促進連絡協議会」の体制を拡充するとともに、移住希望者のニーズに応じた、きめ細かな取組を進めていくことが必要です。
本県では、これまで、「定住交流サポートセンター」や県外事務所に移住者向け相談窓口を設けたほか、首都圏での移住イベントに出展し、本県への移住に関する各種情報提供や移住相談に応じてきたところであります。
平成27年度においては、これらの取組を一層強化・拡充するとともに、新たに、移住や交流人口拡大のための企画や調整を行う「定住・交流促進コーディネーター」を配置するほか、ふるさと回帰支援センターへの常設ブースの設置や、県と市町村との共同による移住フェアを開催し、情報発信の強化及び相談体制の拡充を図ることとしています。
(6)「いわてをまるごと売り込む体制の構築」について
この項目の最後に「いわてをまるごと売り込む体制の構築」についてお伺いいたします。
先に公表された「平成二七年度の組織・職員体制の概要」によると、ふるさとの再生・発展に向けた体制整備として「いわてをまるごと売り込む体制の構築」が盛り込まれております。
人口減少に立ち向かうためには、本県のそれぞれの地域において、一人ひとりの暮らしや、生業に寄り添った取り組みを進めることが重要であり、特にも、生業面において、地域での安定的・持続的経済基盤を構築していくためには、製造業や農林水産業、観光業などで、いわてを積極的に売り込み、外貨を獲得し、得られた所得を、生産・流通・販売・消費を通じて域内で循環させる必要があります。
ついては、「いわてをまるごと売り込む体制の構築」とは具体的にどういうもので、何をしようとするものなのか、その内容についてお伺いいたします。
(政策地域部長答弁)
次に、「いわてをまるごと売り込む体制の構築」についてでありますが、
人口減少に対応し、「ふるさとの振興」を進めていく上で、地域において持続的な経済基盤を構築することが必要であり、そのためには、本県の商工業や農林水産業、観光業など様々な分野の多様な資源や県産品を、県外・国外に向かって、個別的にではなく、戦略的・総合的に売り込んでいくことが重要。
特に、来年度、県オリジナルの良食味米の平成29年度の市場供給に向けた「いわての美味しいお米生産・販売戦略」をスタートさせるほか、7月の宮城県、石巻市等と共同でのミラノ国際博覧会への出展、さらに、台湾との国際観光交流の一層の活発化など、平成27年度には対外的な経済交流が活発に行われる予定。
こうしたことから、県産品の販路拡大や観光客の増加等に向けた部局横断的な取組を戦略的に推進するため、副知事を本部長とした推進本部を平成27年度に設置することとし、現在、具体的な検討を進めているところ。
この推進本部を核とし、県産品の販路拡大や観光客の増加などに向けて、各分野の対外的売込み活動情報を共有し、部局横断的な取組を推進するための体制整備を行い、効果的、積極的に「いわてをまるごと売り込む」取組を進めていく考え。
2 震災復興について
(1)復興の現状認識と本格復興邁進年の取組について
次に、震災復興についてお伺いいたします。
県においては、第一期「基盤復興期間」の取組の成果を土台として、第二期復興実施計画に基づき、本格復興の取組を推進しているところですが、本格復興期間の中間年にあたる平成二七年度の県の一般会計当初予算の総額は、前年度当初比、約九百億円増の約一.一兆円、うち震災対応分は、前年度当初比約七百億円増の約四千五百億円と、総額、震災対応分ともに、震災がれき処理を除く予算額としては過去最大規模となっています。
震災から間もなく四年が経過しようとしていますが、これまでの復興の現状認識と本格復興邁進年の取組をどのように進めていかれるのか、復興事業が新たな重要局面に入ることから改めて知事の決意をお伺います。
(知事答弁)
次に、復興の現状認識と本格復興邁進年の取組についてでありますが、
これまで、一日も早い復興の実現のため、県政史上かつてない規模の事業に取り組んできております。災害廃棄物の処理を終了し、海岸保全施設の約9割、災害公営住宅の約6割で着工したほか、三陸鉄道の全線運行再開、漁業協同組合を核とした漁船や養殖施設の一括整備やグループ補助金を活用した事業所の早期再開など、復興を着実に進めて参ります。
平成27年度も復興を県政の基軸とし、「地元の底力」と「様々なつながりの力」を原動力としながら、災害廃棄物処理関連予算を除く予算額といたしましては過去最大の予算を編成したところでありまして、復興道路や災害公営住宅の整備、被災者の見守りやコミュニティ形成支援、復興まちづくりと一体となった中小企業や商店街の再生などを進めて参ります。
さらには、国際的海洋エネルギー研究拠点の構築などによる新たな産業の育成や、津波復興祈念公園や震災津波伝承施設の整備をはじめとする震災津波伝承まちづくりなどにより、新しい三陸の創造につながる「三陸創造プロジェクト」の具体化を進めて参ります。
(2)応急仮設住宅の集約について
次に、応急仮設住宅の集約について伺います。
今後、災害公営住宅の建設や自宅建設等により恒久住宅への入居が進めば、応急仮設住宅に空き住戸が増加し、応急仮設団地内のコミュニティや入居されている方への見守り、防犯上の安全確保等の問題が生じるものと考えられます。
また、応急仮設住宅は、学校グラウンドや被災された方が所有する民有地にも建設されており、子どもたちのためにも、市町村のまちづくり計画の推進及び地権者本人の再建のためにも、応急仮設住宅の集約が必要であると思われますが、この課題にどのように対応されるのかお伺いします。
(復興局長答弁)
応急仮設住宅の集約についてでありますが、
県といたしましては、各市町村において、被災者の皆さんの住宅再建の意向や、災害公営住宅の整備状況及び市町村のまちづくりの進捗を踏まえ、入居されている方々に応急仮設住宅の集約について、丁寧に説明をし、理解を得ながら計画的に行って行くことが必要と考えているところであります。
このため、市町村に対して被災された方々の住宅再建の意向把握の徹底と応急仮設住宅の集約化計画の策定を要請をするとともに、応急仮設住宅の集約を行う場合は、応急仮設住宅間の移転費用について市町村を通じて補助する経費を平成27年度当初予算案に計上しております。
(3)被災事業所の人材確保の取組への支援について
次に、被災事業所の人材確保の取組への支援について伺います。
被災した事業所は、事業を再開したものの、復興需要による求人が多く、沿岸のハローワークの有効求人倍率は一を超える状態が二年以上続いております。
これに、被災により人口の社会減なども重なり、地元での人材確保が一層困難な状況が続いております。
このため、事業者は内陸部や首都圏など地域外からの人材確保にも努めているところでありますが、一方では民間アパートも被災して物件が少なくなっていることなどから、外から人材を受け入れる際の住居の確保が大きな問題になってきております。
このような被災地の状況は、なりわいの再生を進めるうえでも大きな課題となっており、住居の確保など受入れ環境の整備を急ぎ進める必要があると考えますが、県は、どのように認識し対応しようとしているのかお伺いします。
(復興局長答弁)
被災事業所の人材確保のための取組についてでありますが、
本県の有効求人倍率は20ヶ月連続で1倍を超え、平成26年12月は1.17倍と震災後の最高値を更新するなど、人材不足が深刻な状況となっております。こうしたことから、地域内からの人材確保と併せ、県外からのU・Iターンを促進するため、U・Iターンフェアの開催や企業の求人情報発信支援などにより、地域外からの人材確保に取り組んでいるところであります。
更に、沿岸の基幹産業である水産加工業の早期復興を支援するため、水産加工事業者が新たに人材を確保する際に必要な宿舎の整備や民間アパート等の借上げ費用を市町村と協調して補助することにより、地域外からの人材確保を支援して参ります。
3 TPP交渉と農協改革について
(1)TPP交渉について
次にTPP交渉と農協改革についてお伺いいたします。
初めにTPP交渉についてでありますが、現在、進められているTPP交渉では、その交渉過程の中で、政府与党が聖域として掲げた農林水産分野の重要五品目の死守ラインが、大幅な関税引き下げなどが懸念される状況の中で、その後、報道によれば「五項目、五八六品目」いわゆるタリフラインが一つの選択肢として検討されていることが明らかになる一方、去る二月十九日の衆議院予算員会では、TPP担当大臣が、重要品目にも国内対策が必要となるような関税の削減などを含め対応を検討していることを示唆するなど、目標が後退に次ぐ後退を余儀なくされている感があります。
加えて守秘義務を盾に情報開示が全くなされていないなど問題だらけの取り組みにもかかわらず、先般、首相は、国会において「いよいよ出口が見えてきた。早期の交渉妥結を目指す」と述べるなど最終局面にあるとの認識を示しましたが、国民を蚊帳の外に置いた進め方は極めて遺憾であります。
交渉妥結後は、国会、特にも衆議院に舞台は移りますが、TPP交渉参加につきましては、知事は、機会あるごとに反対の意思表示をされて参りましたけれども、妥結内容が県民の利益に反するものと認められる場合、協定の批准阻止に向けあらゆる行動を取る用意があるのかお伺いいたします。
(知事答弁)
TPP協定交渉についてでありますが、
TPP協定は、本県の基幹産業である農林水産業はもちろん、投資、医療、労働など、県民生活や経済活動の幅広い分野に大きな影響を及ぼすことが懸念されているところ。
このため、国は、交渉に当たって、国民に対する十分な情報開示と説明を行い、国民的議論を尽くした上で慎重に判断するべきであり、地域経済や国民生活に影響が生じると見込まれる場合には、交渉からの撤退も含め、断固たる姿勢で臨む必要があると考えている。
こういう考え方に立ち、これまでも国に対し繰り返し要請してきたところであり、今年度においても、政府予算提言・要望や、北海道・東北6県での要請など、計5回の要請活動を行ってきたところ。今後においても、交渉の動向を注視しながら、衆参両院農林水産委員会における決議を遵守するよう、あらゆる機会を捉え、国に強く要請していく。
(2)農協改革について
ア 農協改革の本県への影響について
次に、TPP参加の地ならしともいえる農協改革についてお伺いいたします。
首相は、施政方針演説の中で「強い農業を作るための改革。農家の所得を増やすための改革」として農協、農業委員会、農業生産法人の三つの改革断行を表明しましたが、農家不在のまま進められた改革に対し批判や不満の声が澎湃として上がっております。
例えば、組織改革はあくまでも手段であって目的ではない、最大の目標である農業所得の向上と農業の活性化にこれらの改革がどう結びつくのか理解できない、強い農業の具体像が見えない、農協の解体ではないか、TPP批判封じではないか、国際競争力、国内競争力を備えた農産物を取り扱う農家は国内においてはほんの一つまみであり、ほとんどの農家は小規模、中規模農家であり、こうした多様な農家が地域を支えているにもかかわらず、これでは地域解体促進策ではないか等々、農業の現場から聞こえてくる声は不安と批判が交差したものばかりであります。
本来、農協改革は、農協そのものが戦後の統制経済の一環として国主導で誕生したという経緯があるとはいえ、組合員の自発的意思に基づく自主的な改革を基本とすべきであります。そもそも民間の協同組合の自治権に政治権力が力ずくで介入することが許されてよいものなのでしょうか、また、全中及び農協の存在が、農家所得の低迷、担い手不足、農業生産額の減少、耕作放棄地の拡大などの現在のわが国の農業危機を招いた主たる要因となっているのでしょうか。
この手法が認められるとなると、およそ組合といわれる存在、例えば、労働組合、森林、漁業組合、生協しかり、信用金庫しかりでありますが、時の政治権力によって国民の利益に沿わない存在であると一方的に認定されれば、組合員の意思とは関係なく解体を含め差配されることになります。
ついては、知事にお伺いいたしますが、まず、今日の農業危機を招いた原因は全中や農協にあると認識されているのか、政治と協同組合の関係はどうあるべきと考えておられるのか、また、いま地方再生が叫ばれている中、今回の農協改革が実行された場合の本県農業への影響をどう捕えているのかお伺いします。
(知事答弁)
次に、農協改革の本県への影響についてでありますが、
農業従事者の減少や集落機能の低下など、農業・農村を巡る様々な課題がある中で、各農協は、中央会の助言、指導のもとに、経営の健全化を図り、農家への営農指導をはじめ、農産物の共同販売や生産・生活物資の共同購入、貯金や貸付け、共済、福祉サービスなど、それぞれの地域の実情に応じて必要なサービスを総合的に提供することで、地域農業の振興、そして農村地域の社会生活全般を支える重要な役割を果たしてきている。
今般、国が進めている農協改革については、現在、法案の骨格が示された段階であり、今後の推移を見守る必要がありますが、本来、協同組合は、組合員の相互扶助の精神に基づく自律、自助の独立した組織であり、中山間地域等の条件不利地域を多く抱える本県にあっては、こうした地域で農業や地域づくりに懸命に取り組んでいる農家においても、地域に根差して、暮らしも良くなっていくような改革としなければなりません。
今後、国会への関連法案の提出が予定されているが、これまで農協が果たしてきた役割や当事者である農業者・関係団体など現場の意見、地域の実情をしっかりと踏まえながら、改革の目的としている農業者の所得向上と農業・農村の活性化につながるように進めて欲しいと考えているところ。
イ 「いわて型農業の在り方」について
また、本県においては、大規模な専業農家のみならず多様な農家が地域の農業を支えている実態の中において、担い手農家をどう育成し、逆に小規模農家をどう守っていくのかを含め「いわて型農業の在り方」についてお伺いいたします。
次に、米の生産販売戦略について伺います。
(知事答弁)
「いわて型農業の在り方」についてでありますが、
本県の農業は、地域経済を支える基幹産業の一つとして持続的に発展を図るとともに、農業が地域社会そのものを支えていることから、小規模農家も参画した地域農業の維持・発展を図っていくことが重要である。
このため、県では、地域農業全体の展開方向を明確にした本県独自の「地域農業マスタープラン」を基本に据え、担い手農家の育成については、農地の集積・集約化などによる経営規模の拡大や機械・施設の導入による効率的な生産体制の整備を支援し、小規模農家については、園芸作物の導入・拡大や地域の多彩な資源を活かした農産加工などの取組を促進している。
今後においても、こうした取組を促進し、意欲と希望を持って農業経営に取り組む担い手の育成を図り、小規模農家も、地域に根差して、暮らしも良くなっていくような農業の実現に向けて取り組んでいく。
4 米の生産販売戦略について
国では、平成二六年産から、米の直接支払交付金などの経営所得安定対策を見直し、実施しているところであり、加えて、平成三十年産からは、行政による生産数量目標の配分廃止を行うこととしています。
しかしながら、二五年産米の在庫が過剰であったことから、平成二六年産の米価は大幅に下落したところであり、主食用米の需給は、今後も緩和基調が続く懸念があるため、米農家の経営安定が重要な課題となっているところであります。
本県では、平成二八年度に「あきたこまち」の代替品種として「岩手一〇七号」が、平成二九年度には、全国トップの食味を目指す「岩手一一八号」のデビューが予定されており、県民や生産者から多いに期待されるところですが、一方において、今後、益々、新品種を中心とした米の産地間競争の激化が予想されるところでもあります。
また、過去においても、類似の取り組みを展開されてきましたが、例えば、最先端の消費者を中心としてキメ細かな市場調査が徹底できなかったこと等から十分な成果を挙げずに事業を終えた経緯もあります。
例えば、「かけはし」「ゆめさんさ」など、過去の県オリジナル品種の取組があげられますが、これまでの反省も踏まえ、県と農業団体では、二月に、平成二九年度を目標とした「いわての美味しいお米生産・販売戦略」を策定し、生産者をはじめ関係者が一丸となって、米産地の確立に取り組んでいくと承知しております。
米価の下落やコスト高等で苦しい経営にあえぐ農家の不安が高まりを見せ、加えてコメ政策が過去に例のない厳しい中にあって、この戦略の中では、全国の消費者や実需者から、長く愛され続けるお米の産地を目指す姿と位置付けておりますが、当面の目標は昨日の一般質問で明らかになりましたが、最終目標をどう定め、具体的にどのような実務的な取組を進めていくのか、これまでのいきさつから失敗は許されないと思いますので、過去の轍は踏まないという覚悟の程を含めお伺いします。
(農林水産部長答弁)
米の生産販売戦略についてでありますが、
国における米政策の転換や米価下落など、米を取り巻く環境が厳しさを増す中で、本県における向こう3年間の米づくりの方向性を明らかにするため、今般、「いわての美味しいお米生産・販売戦略」を策定したところ。
戦略においては、コシヒカリを超える良食味米として開発を進めている「岩手118号」をフラッグシップとして、県産米全体の評価と知名度の向上を図るなど、消費者や実需者のニーズに的確に対応することとしており、長く愛され続ける全国トップクラスの米産地の形成を目指していく。
このため、生産面において、「岩手118号」について、栽培適地の設定や栽培者の特定、生産者が主体となった栽培方法の徹底などにより、全国最高水準の品質・食味を確保するとともに、「岩手107号」の「あきたこまち」からの計画的な転換、「ひとめぼれ」の食味向上技術の定着などに取り組み、また、販売面においては、「岩手118号」、「岩手107号」のネーミングやデザインの作成、話題性を高めるプロモーションの展開、食味関連成分など美味しさの見える化や、消費者や実需者に対する直接アピールによる、産地と県産米のイメージアップなどに取り組むこととしている。
これら取組を、新たに設置する「県産米戦略室」が中心となり、生産者や消費者、農業団体等が一丸となった推進体制を構築し、目標の達成に向け強力に展開していく。
5 国民健康保険について
(1)県内市町村の国保の財政状況について
次に、国民健康保険についてお伺いいたします。
国民健康保険は、他の医療保険制度と比較し、被保険者の年齢構成が高いことから医療費水準も高く、また、無職や非正規労働者等の加入が多く所得水準が低いことから、全国的に厳しい財政運営を余儀なくされており、構造的な赤字体質に陥っていると言われております。
先般、厚生労働省により、全国の市町村が運営する国保の平成二五年度財政状況が取りまとめられ、全体での実質赤字額は、前年度より八五億円増の三千一三九億円、また、赤字保険者の割合は半数を超えたと公表されたところです。
このような状況の中、国においては、医療保険制度改革の一環として、国保の財政基盤を安定させ効率的な事業運営を確保するため、財政運営の責任主体を市町村から都道府県に移行することとされ、関連法案を今国会に提出すると報じられております。
本県でも、各市町村においては、財政状況は依然として厳しく、国保運営に苦慮されているものとお聞きしておりますが、県内市町村における平成二五年度の国保の財政状況について伺います。
(保健福祉部長答弁)
県内市町村の国保の財政状況についてでありますが、
平成25年度の決算では、実質赤字額は、約6億7千万円となっており、前年度から約7億6千万円減少しているものの、21保険者で赤字を計上するなど、依然として厳しい状況にある。
なお、実質赤字額が前年度から減少したことについては、平成25年度から行われている岩手、宮城、福島の被災3県に対する国の追加財政支援策、約10億4千万円の影響であり、この追加財政支援策がなければ、前年度と比べ、実質赤字額は、逆に約2億8千万円増加することとなる。
(2)国保の都道府県化を巡る課題について
また、国保制度の見直しについては、一昨年十二月に成立したプログラム法に基づき、国と地方とが協議を行い、財政上の構造問題の分析とその解決に向けた方策や、都道府県と市町村の役割分担のあり方について、これまで幾度にもわたり議論されてきたと承知しておりますが、これまで一律に市町村が担ってきた国保運営が、今後、都道府県化されることにより、財政上の構造問題は解決されるのか、また、県と市町村との具体的な役割分担はどうなるのかなど、国保の都道府県化を巡る課題について伺います。
(保健福祉部長答弁)
国保の都道府県化を巡る課題についてでありますが、
昨年1月から、国と地方による国保基盤強化協議会において、議論を重ねた結果、平成30年度から都道府県が市町村とともに国保の運営を担う改革案が了承された。
都道府県では、移管の条件として、財政上の構造問題の解決が前提との主張をしてきたが、改革案では、これまでの主張に照らし十分とは言えないながらも、毎年約3,400億円の財政支援等による財政基盤の強化策が示されたほか、将来にわたり国保の持続可能性を担保するための検討を加え、必要な措置を講ずるものとされた。
また、役割分担では、都道府県は、財政運営の責任主体となり、安定的な財政運営や効率的な事業運営の確保等、国保運営の中心的な役割を担うこととされ、県内統一的な国保運営方針の策定、市町村ごとの分賦金決定、標準保険料率の設定などを行い、市町村は、保険料の賦課・徴収、資格管理・保険給付、保健事業など、地域におけるきめ細かい事業を引き続き担うこととされた。
新制度への円滑な移行に向けては、具体的な制度設計や保険料負担の平準化などの残された課題の解決について、引き続き国と地方で協議することとされており、県としては、今後も全国知事会を通じて提言を行うとともに、市町村と連携を図りながら、準備を進めていく。
6 介護保険制度の改正について
(1)地域包括ケアシステムの構築に向けた市町村の対応状況について
次に介護保険制度の改正についてお伺いいたします。
後期高齢者人口は、介護保険制度が施行された平成十二年当時、全国で九百万人、十年後の平成二二年には、約一,四〇〇万人となり、「団塊の世代」が後期高齢者となる平成三七年には二,一七九万人と二千万人を突破し人口の一八.一%を占め、以降平成四二年をピークに減少に転じるものの割合は上昇を続けるものと見込まれております。
また、全国平均を上回って高齢化が進む本県においては、平成三七年には約二十三万四千人、人口の二〇.六%占め、以降全国と同様に推移するものと見込まれております。
こうした中、「できる限り住み慣れた地域で、最期まで自分らしい生活を送りながら老いていきたい」というのが多くの人々に共通する願いであり、医療や介護が必要な状態となっても、できる限り住み慣れた地域で安心して生活を継続し、人生の最期を迎えることができる環境の整備が喫緊の課題となっております。
このため、国では、地域において効率的かつ質の高い医療提供体制を構築するとともに地域包括ケアシステムを構築することを通じ、地域における医療及び介護の総合的な確保の推進を目的として、昨年六月、「医療介護確保総合推進法」を制定し、介護保険制度も大規模な改正が行われたところです。
ついては、今回の制度改正により、市町村が主体となって在宅医療と介護の連携や認知症施策、生活支援サービスの充実など地域包括ケアシステムの構築に向けた取組を来年度から本格化することとされておりますが、県内市町村が的確に対応できるのか、その対応状況と課題についてお伺いします。
(保健福祉部長答弁)
地域包括ケアシステムの構築に向けた市町村の対応状況と課題についてでありますが、介護保険制度改正に伴い、平成30年4月までに実施が必要な事業について、平成27年度には、「在宅医療と介護の連携推進」については、県内24の市町村等保険者のうち16保険者、認知症への早期対応の促進など「認知症施策の推進」については10保険者、「生活支援サービスの充実強化のための体制整備」については11保険者が実施を予定している。
また、従来の介護予防事業と、予防給付のうち訪問介護と通所介護については、平成29年4月までに新しい「介護予防・日常生活支援総合事業」への移行が必要であり、平成27年度には2保険者が移行を予定している。
市町村等保険者における主な課題は、在宅医療・介護連携の推進に向けた医師会等との連携強化、認知症の初期段階での支援を集中的に行うチームの中核を担う認知症サポート医の確保、生活支援サービスを行う多様な担い手の養成等を担う生活支援コーディネーターの確保などが挙げられる。
(2)地域包括ケアシステムの構築に向けた県の支援について
引き続きお伺いいたします。県内のどこに住んでいても必要なサービスが受けられ、安心して生活ができる地域の実情に応じた地域包括ケアシステムの構築に向けて、市町村の支援を担う県の役割が重要です。県としてどのように支援していくのかお伺いします。
(保健福祉部長答弁)
県の支援についてでありますが、
県では、今年度、市町村長のリーダーシップによる取組が推進されるようトップセミナーを開催したほか、市町村、郡市医師会や介護関係団体との意見交換を行うなど、地域包括ケアシステムの重要性について関係者間の認識の共有に努めてきた。
平成27年度は、市町村等保険者における主な課題に対応するため、県では、医療、介護などの関係団体等で構成する地域包括ケアシステム構築に係る連絡会議を新たに設置し、推進方策の検討や連携強化を図るとともに、医療介護連携のための市町村と医師会等関係団体との調整、認知症サポート医の養成や、認知症初期集中支援チームの設置・運営に関する研修、生活支援コーディネーターの養成研修等を実施していく。
さらに、県内外における地域包括ケアに係る先進的な取組事例の紹介を行うとともに、市町村を訪問し、地域課題に対応した具体的な助言を行うなど、平成30年4月までに必要な事業について、その円滑な実施を支援していく。
7 介護人材の確保対策について
次に介護人材の確保対策についてお伺いいたします。
国は、平成二七年度政府予算案において、介護事業者に支払われる介護報酬を全体で二.二七%引き下げることを決定しました。この下げ幅は、過去最大であった平成一八年度のマイナス二.四%以来の引き下げとなります。
国では、介護報酬を引き下げる代わりに介護職員を対象とする「処遇改善加算」を拡充することにより、一人当たり平均で月額一万二千円の賃金アップが図られると説明していますが、実際に賃金に反映されるかは不明です。
また、介護事業所には、この加算の対象にならない職種の職員も多数おり、事業所の総収入が減少すればこうした職員の賃金や、事業所の安定的な運営そしてサービス提供にも悪影響が及ぶことが懸念されます。
本県の高齢化は全国平均を上回るペースで進行しており、介護サービスの充実は喫緊の課題となっていますが、事業所では求人を出しても人材を集めることができない状況にあります。そうした中で現場の実態に逆行するような政策が取られることに憂慮の念を禁じ得ないものであります。
ついては、県では、こうした介護現場の実態をどう認識し、国に対して働きかけを行ってきたのでしょうか。そしてまた、平成二七年度においては、県として具体的にどのような取組を行うことにより介護人材不足という状況に対応しようとしているのかお示し願います。
(保健福祉部長答弁)
介護人材の確保対策についてでありますが、
県では、介護人材が不足している現状から、介護人材の確保及び育成が重要な課題であると認識し、平成26年6月に行った平成27年度政府予算提言・要望においては、「介護保険制度の円滑な運営のための制度改善等」の一つとして、「介護従事者全般に対する処遇改善を図るため、適切な水準の介護報酬を設定」するよう制度要望を行った。
また、岩手県高齢者福祉協議会等の関係団体との意見交換を随時実施するとともに、更に現場の実態把握を行うため、現在、介護事業所を対象にアンケート調査を行っており、その中では、人材確保には介護現場のイメージ向上や労働環境の改善が求められていることなど、様々な意見をいただいている。
そうした現場の声も踏まえ、平成27年度には、新たな取組として、「介護の仕事」の魅力を発信するためテレビ番組によるPR事業を行う他、県内各地にキャリア支援員を配置し、新規人材の確保や潜在有資格者の掘り起こしを行うとともに、単独での取組が困難な小規模事業所を対象にした合同面接会や職員スキルアップのためのセミナー、経営者の意識改革を促し労働環境改善の機運醸成を目的とするセミナーの開催などを予定している。
また、働きながら介護福祉士などの資格取得を支援する取組や、被災地における介護事業所の住環境整備や就労支援金支給への支援を継続して行っていく。
介護人材不足への対応は、県のみならず、事業者、関係機関・団体、市町村等それぞれの取組が重要であり、国、県、関係団体及び養成施設で構成される岩手県介護労働懇談会などを通じ、関係機関等と連携しながら、介護人材の確保・定着に努めていく。
8 三陸ジオパークの教育分野での推進について
最後に、三陸ジオパークの教育分野での推進についてお伺いいたします。
三陸ジオパークの推進は、観光、産業、教育等の多くの分野にまたがる活動を展開し、持続可能な地域振興を図る重要な取り組みであり、沿岸被災地における創造的復興のシンボルの一つでもあります。
現在、被災地の復旧・復興が進む中で、将来の本県を担う人材育成の観点から、教育面での活用、具体的には、自分の住んでいる地域の良さ、すばらしさを学習し、誇りと愛着をもって郷土を認識する取り組みは極めて重要であると考えるものであります。
ついては、三陸ジオパークの取り組みの中で、本県の未来を支える子供たちに対する教育面での取り組みに当たって、どのような考え方をもって進められるのかお伺いいたします。
(政策地域部長答弁)
三陸ジオパークの教育分野での推進についてでありますが、
ジオパークの活動は、住民自らが地域の宝を再発見し、磨き上げ、その魅力を発信することにより、地域づくりの推進や交流人口の拡大を図ろうとするものです。
このため、地形や地質等はもとより、地域の歴史・文化などを幅広く学ぶことができるジオパークを教育分野で活用することは、地域資源の新たな発見や再認識に繋がるといった効果が期待でき、子どもたちの郷土愛を醸成していく上で、重要な取組と認識しています。
これまで、三陸ジオパーク推進協議会を中心に、県教育委員会及び市町村教育委員会と連携して、教員向け研修会や教材用副読本の作成のほか、現地観察を取り入れた「ジオパーク授業」を今年度6回実施し、「生きた教材で生徒が主体的に学習できた」などの評価を得ています。
今後、ジオパーク活動が、震災の教訓を次世代に継承する上でも意義深い取組であることから、県としては、三陸ジオパーク推進協議会を通じて、「たろう観光ホテル」等の震災遺構を取り入れた防災学習の推進や、ジオパーク授業の拡充など教育分野における活動にも注力して参ります。
以上で一般質問を終わります。
ご清聴ありがとうございました。