6月29日 佐々木順一議員一般質問
◯議長(関根敏伸君)
休憩前に引き続き会議を開きます。
日程第1、一般質問を継続いたします。佐々木順一君。
〔43番佐々木順一君登壇〕(拍手)
◯43番(佐々木順一君)
希望いわての佐々木順一でございます。
怠けていたわけではありませんが、3年3カ月ぶりの一般質問となりました。去年の選挙疲れもまだ残っておりまして、一般質問の勘も戻っていないところではありますが、努めて精いっぱい質問をしてまいりたいと思っておりますので、どうぞ執行部の皆さんにおかれましては、エッジのきいた答弁をお願い申し上げたいと思います。
〔議長退席、副議長着席〕
それでは、質問に入るに先立ちまして、このたびの新型コロナウイルス感染症により亡くなられました皆様方に心からお悔やみを申し上げますとともに、今、闘病生活を送られている方々に心からお見舞いを申し上げます。
また、医療施設や福祉施設において、リスクをとりながら新型コロナウイルス感染症と戦っている多くの方々の献身的な活動に改めて敬意を表したいと思います。
それでは、通告に従いまして質問をいたします。
まず、本県は一貫して新型コロナウイルス感染症の感染者ゼロを維持し続けてまいりました。この要因は、知事が全国に先駆け、緊急事態宣言発令前から、一定の条件に該当する方々に対し2週間の自宅待機などの行動自粛を呼びかけたことや、慎み深い県民性が三密回避やソーシャルディスタンスなどの行動をとらせたことなどによるものと思います。
また、首都圏などと本県が日帰り県になっていることや適正な人口分布など、地理的、社会的要因も挙げられますが、公共の精神を尊ぶすぐれた県民性が、マスク、手洗いなどの感染予防行動の徹底につながったものと思いますけれども、感染者ゼロを維持してきた要因をどう捉えているのか、まずは、野原保健福祉部長に疫学的な見地からの御見解をお伺いいたします。
次に、知事にお伺いいたします。
国連とベルギー政府によって創設されました国際災害データベースによりますと、災害を、気象災害、地質災害、生物災害の三つに分類し、感染症は病虫害とともに生物災害に位置づけておりますけれども、生物学的には細菌は生物に含まれますが、ウイルスは生物ではないとの指摘もあり、直ちに災害と言えないのではないかという指摘もありますが、これはあくまでも学問上の話であります。
今回の新型コロナウイルス感染症がもたらした一連の甚大な被害について、政府からは災害という認識、本来であればそれ以上の国家安全保障の問題であるとの認識がないまま諸対策が講じられてきております。戦うとか対策の以前に、公式に、新型コロナウイルス感染症による一連の損失を感染症有事による生物災害であると位置づけることが何よりも必要であり、これを出発点として諸対策を講ずる必要があると思いますが、知事の認識をお伺いいたします。
以降の質問については、質問席で行いますので、御了承を願います。
〔43番佐々木順一君質問席に移動〕
〔知事達増拓也君登壇〕
◯知事(達増拓也君)
佐々木順一議員の御質問にお答え申し上げます。
新型コロナウイルス感染症の位置づけについてでありますが、世界では、いまだ感染拡大が続いており、6月28日現在で1,000万人を超える方が感染し、約50万人が亡くなるなど、人命にかかわる圧倒的な被害が発生しています。加えて、国際的にも国内的にも、人の移動をとめなければならない状況などにより社会経済的にも甚大な被害が生じています。
感染者が確認されていない本県におきましても、不要不急の外出の自粛要請や休業要請を実施したことなどにより、県民生活、県民経済に大きな影響が出ているところであります。
新型コロナウイルス感染症は、被害の規模においても、多種多様な領域に及ぶ被害の性質においても、通常の公衆衛生対策で足りるものではなく、国の機関を総動員するような対策が必要であり、そのような危機管理が求められると考えます。
その他のお尋ねにつきましては関係部長から答弁させますので、御了承をお願いします。
〔保健福祉部長野原勝君登壇〕
◯保健福祉部長(野原勝君)
感染者ゼロの要因についてでありますが、新型コロナウイルス感染症は世界的に感染拡大が続いている状況にあり、また、病態として十分解明されていない部分も多いことから、現在、世界中において多くの研究者により研究、解析が進められているものと承知しています。
我が国の名古屋工業大学の研究グループによると、人口密度や気象条件が感染の拡大、収束に影響すると報告されています。
岩手県におきましては、人口密度が低いことに加え、議員御指摘のとおり、県民及び岩手にかかわる全ての方々が、密閉、密集、密接の三つの密を避け、マスクの着用や丁寧な手洗いを励行するなど、基本的な感染対策を行っていただいたこと。さらに、外出自粛要請等を踏まえ、感染拡大している地域との往来などについて、慎重かつ冷静に行動していただいたことなどが複合的に関連し、感染未確認という結果につながっているものと認識しています。
◯43番(佐々木順一君)
アメリカのウォールストリートジャーナルには、この岩手県の現地レポートを記事として掲載しております。見出しは、日本のこの地方には新型コロナウイルスは存在しないと、こういうことであります。
岩手県の令和時代における後藤新平の再来かと言われている野原保健福祉部長であり、国内外の注目を浴びている岩手県でもありますので、世界からいただいている県民の今の誉れをあすの誇りとなすように、ぜひ野原保健福祉部長においては、新型コロナウイルス感染症対策に万全を期していただくことを御期待申し上げたいと思います。
また、あえて知事に申し上げます。公衆衛生に精通した野原部長を保健福祉部長に登用したこの人事判断、当時は感染症の兆しは全くないときで、この感染症を予期したとは言わないと思いますが、いわば天の配剤に近い人事登用だと思いますので、その見識に改めて敬意を表したいと思います。
余り褒め言葉が先行しますとなれ合いかと言われますので、これよりは厳しく質問をしてまいります。
それではまず、政府の初動対応について知事にお伺いいたします。
国内初の感染者の確認は、1月16日武漢市を訪れた神奈川県在住の中国人でありました。1月23日武漢市が封鎖、1月28日には、武漢市からやってきたツアー客を乗せた日本人男性運転手の二次感染が確認されております。この間、政府は武漢市に在留する邦人救出に乗り出しましたが、その一方において、春節を利用し日本にやってきた多くの中国観光客の検疫はおざなりでありました。中国本土からの入国制限が発表されたのは3月5日、図らずも中国要人の訪日延期の発表の日と同じでありました。
新型インフルエンザ等対策特別措置法施行が3月14日、東京五輪延期決定が3月24日、そして、73の国々と地域からの入国拒否を実施したのは4月3日であります。そして、4月7日に緊急事態宣言の発令となるわけでありますが、ここで言えるのは、中国湖北省を起源とするウイルスとヨーロッパ由来のウイルスの侵入を水際で阻止できなかったという事実であります。一言で言えば、入国管理政策に失敗したのではないかと思います。最前線が突破され、次の防御ラインの検査体制も貧弱であったことから市中感染を許すことになり、結果的に多くの国民の人生が狂わされたと思います。
初動対応を含めまして入国管理政策を的確迅速に行っていたなら、事態はかなり違ったものになったと思いますけれども、このことについて知事はどうお考えでしょうか。
◯知事(達増拓也君)
日本では、武漢方面からの中国人観光客を主とする第1波が2月上旬に始まり、その後、欧米など海外からの帰国者を主とする第2波により3月中旬から流行が拡大したことが、ウイルスの遺伝子解析で明らかになっています。
こうした状況に加えて、院内感染や施設内感染、接待を伴う飲食店でのクラスター発生の影響なども指摘されておりますが、国の専門家会議において、避けなければならないとされたような形の感染拡大がなぜ起きてしまったかについて、検証すべきと考えております。
このため、次の感染拡大に備え、全国知事会に設置された新型コロナウイルス対策検証・戦略ワーキングチームに参加し、地域の感染ルートやクラスター、そして、水際対策についてしっかりと検証を進め、国に対して必要な提言を行いたいと考えます。
◯43番(佐々木順一君)
どうぞ、この入国管理政策のみならず全体を検証していただいて、そして、改善すべき点が多々あると思いますので、ぜひ、全国知事会での検証に期待を申し上げたいと思います。
次に、保健福祉部長にお伺いいたします。
さきの2月定例会の予算特別委員会の保健福祉部の一般質疑において、私は、災害対策は災害対策基本法を中心に救助、生活再建など復興に向けた法体系が充実しておりますが、感染症対策の法整備は貧弱であるので、近い将来、体系的な法整備を求めるべきではないかとお尋ねを申し上げました。これに対し、部長は、従来の予防、医療、感染拡大防止といった感染症対策にとどまらず、住民の生活や社会経済機能への影響も視野に入れた体系整備が求められるとの認識を示されましたが、どのような問題がこの法律を運用して明らかになったのか、具体的に、かつわかりやすくお示し願いたいと思います。
◯保健福祉部長(野原勝君)
新型インフルエンザ等対策特別措置法などの課題についてでありますが、大きく分けて2点と考えております。
感染症対策の視点では、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律に基づく濃厚接触者等への聞き取りが、任意の調査であり、実効性を担保する法的根拠が明確でないことが指摘されています。このことから、これまで接待を伴う飲食店におけるクラスターなどにおいて調査に協力を得られなかったことにより、感染状況の把握が困難であった事例が報告されています。
社会経済の視点では、国は、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき緊急事態措置を実施すべき期間と緊急事態措置を実施すべき区域を決定し、緊急事態宣言を発することとなっています。しかしながら、その期間や区域を定める基準があらかじめ明示されていなかったことから、都道府県が休業の要請や解除を実施するに当たって、周知期間を十分にとることができなかったため、対応する事業者の準備が難しかったことなどが課題と考えているところであります。
◯43番(佐々木順一君)
実務的なお話、ありがとうございます。
それでは、知事にお伺いいたします。
感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律では、感染症患者の就業制限や建物への立入制限に対する実施主体は都道府県知事であると定められておりますが、これらの要請はいわば行政指導という範囲におさまるものであります。しかし、新型インフルエンザ等対策特別措置法により、緊急事態のもとでは、外出自粛や休業の要請は知事権限とすることが明記されたところであります。
ところが政府は、新型インフルエンザ等対策特別措置法の基本的対処方針の改定を重ねることによって運用ルールを事実上変更し、これにより現場を担う知事の権限が曖昧にされてきたのが実態ではないかと、こう思います。
今回、新型インフルエンザ等対策特別措置法を運用され、どのような問題意識を持たれたのか、制度上の欠陥も含めてお伺いいたします。
◯知事(達増拓也君)
新型インフルエンザ等対策特別措置法では、国の緊急事態宣言のもと、知事みずからの判断で都道府県内の感染拡大防止や社会経済維持のために、外出の自粛や休業等の要請解除ができることとされています。
一方、国の新型コロナウイルス感染症対策本部において決定している基本的対処方針では、知事が休業の要請等を実施しようとする場合には、国への事前協議が必要とされています。基本的対処方針が法律上の規定を上回るような手続を求めているため、国と都道府県の間で運用上の疑義が生じており、改善の余地があると考えます。
◯43番(佐々木順一君)
それでは、自粛要請と休業補償の関係についてお聞きいたします。
休業補償について国は認めておりませんが、地方自治体が協力金として支援することについては容認をしております。名前を変えれば、国がだめでも地方ならよいという理屈づけになりますが、私にとってこれは理解不能であります。少なくとも理路整然とすべきであり、国の責任を明確にする必要があると思いますが、まず、この点について知事の見解を伺います。
あわせて、国が交付した一連の感染症対策費や経済対策費は全て予算措置であります。政府の裁量によってどうにでもなりますが、今後のことを考えると、この感染症対策あるいは経済対策について、一定のルールづけあるいは規定をつくるべきと思いますが、あわせてお伺いいたします。
◯知事(達増拓也君)
国は、自粛要請の対象となっていない分野においても甚大な影響が生じていることなどを勘案すると、要請等に基づく休業に伴い生じる個別の損失を直接補償することについては現実的ではないとしている一方で、地方公共団体の裁量により実施できる臨時交付金においては、売り上げが減少した事業者に支援する場合は対象としているところであります。
県といたしましては、休業補償は本来国の責任において行われることを基本として、全国知事会等を通じ国に対して提言を行ってまいりました。また、要請等に基づく休業に伴わなくても、大きな収入の減少が発生している事業者に対して国による支援を求めてきたところであります。
このように自粛要請と休業補償の関係を整理する必要があることに加え、新型コロナウイルス感染症への対応が長丁場となる中で、構造的に大きく収入が減少することとなる事業者に対する支援についても国に求めていく必要があります。
◯43番(佐々木順一君)
平たく言えば、戦いと言う割には、当初軍資金は足りなかったと。では、武器はとなると、マスクが足りていない、検査機器も少ない、防護服も足りない、当初はそういう実態ではなかったかと思います。現地司令官の都道府県知事に戦う権限を与えるわけでありますから、では、作戦を立てて戦うぞと言ったところ、大本営の政府のほうから、いやいや、待て待て、戦端を開く前に、事前にもう一回政府と相談してくれと、当初はこういう大変窮屈な状態ではなかったかなと私は思っております。
ここで、本来は知事の認識を聞けばいいのですが、時間がないので次の質問に入ります。新型コロナウイルス感染症は秋あるいは冬の第2波も来るのではないかと予測されております。加えて、長期戦になるのではないかとも言われております。
休業補償や医療機関への補償などをどう位置づけるのかも含め、できるだけ予算措置の取り扱いを少なくするなど、医療制度、検査体制のあり方、補償や給付のあり方などについて、制度化を図るなど安定性を持たせる必要があろうかと思っております。
特に、次なるパンデミック。まず、21世紀に入って、MERSもSARSもあって、あるいは、10年前のインフルエンザもありました。5年、10年の間に必ず感染症が襲来するわけでありますので、これらに備えるためにも疾病管理予防センターの設置、いわばアメリカのCDC、日本版CDCと言ってもいいのでしょうか、これらも含めて感染症対策あるいは社会経済対策を網羅した、災害に関する体系的かつ恒久的な法整備を全国知事会を含めて求めるべきだと思いますが、知事の認識を改めてお伺いいたします。
◯知事(達増拓也君)
さきに申し上げましたとおり、国の専門家会議において、避けなければならないとされた形の感染拡大が起きてしまったことに加えて、全国的なマスク不足や医療現場における物資不足が生じるなど、国の対応については検証すべき点があります。
全国知事会の新型コロナウイルス対策検証戦略ワーキングチームにおいては、外出自粛、休業要請等の運用基準や医療物資の確保、そして、法的な枠組みのあり方等についても検討を行うこととしておりまして、私も新型コロナウイルス対策検証戦略ワーキングチームに参加して、全国知事会を通じて国に提言をしてまいります。
◯43番(佐々木順一君)
それでは、よろしくどうぞお願いいたします。
次に、実務的なことにつきましてお伺いしてまいります。
PCR検査は知見の蓄積や技術革新によりまして当初より格段に進歩してきておりますが、ワクチンや有効な治療薬が開発、普及されない限り、収束を迎えることは不可能であります。しかしながら、収束までは検査、追跡、隔離、治療、療養を繰り返すほかないと思います。
県は感染拡大の局面も見据えまして、医療圏ごとに発熱外来の設置に取り組んでおりますが、設置状況と今後の見込み、完了時期についてお伺いいたします。
また、国が示したPCR等の検査体制の強化に向けた指針によりますと、都道府県を初め関係機関に対し検査需要の見通し、帰国者・接触者外来の検体採取対応力、地域外来・検査センターの検体採取対応力、そして、検査能力―保健所、民間検査機関あるいは大学、医療機関などについて、いずれも最大ピーク時における1日の件数の報告を求めております。PCR検査による感染者ゼロの本県では、算定は難しいものがあるとは思いますが、これらについてどう試算されているのか、その根拠も含めましてお伺いいたします。
あわせて、最大ピーク時を迎えた場合、マンパワーは十分確保されているのか、個人防護具や消毒液、検査試薬など医療資材を安定的、継続的に確保できる体制になっているのかお伺いいたします。
さらに、夏を過ぎればコロナウイルスの伝播力が高まるとも言われている。一方、毎年ではありますが、インフルエンザを初めさまざまな呼吸器疾患の季節を迎えます。発熱外来などにおいて作業を円滑に進めるためにも、全ての県民に対し、早い段階からインフルエンザの予防接種を行うことを推奨すべきと思いますが、いかがでしょうか。それぞれお答えを願います。
◯保健福祉部長(野原勝君)
大きく3点御質問いただきました。
まず、地域外来・検査センターの設置状況と今後の見込みについてでありますが、これまでに、両磐、宮古、胆江、釜石及び盛岡の5医療圏において運用開始されたところであります。中部、気仙、二戸の各医療圏におきましても、設置する市において予算措置がされたほか、久慈医療圏においても関係者等と設置に向け調整を進めているところであり、7月中を目途に全ての医療圏において設置される見込みとなっています。
次に、最大ピーク時の検査体制等についてでありますが、6月19日に国からの事務連絡で、3月、4月の国内流行状況を踏まえた新たな流行シナリオが示されたことから、本県におけるPCR検査需要や保健所等での必要なマンパワーについて、改めて現在精査をしているところでございます。また、県ではこれまで、OB保健師の確保などにより保健所のマンパワーの確保に努めてきたところであります。
今後におきましては、新たな流行シナリオに基づき算出した検査需要に対応し、帰国者・接触者外来における検体採取能力、地域外来・検査センターの検査対応能力の向上を図るとともに、環境保健研究センターや民間検査機関等でのPCR検査体制の強化、抗原検査の導入などにより、最大ピーク時に対応できる検査体制の強化に努めていく考えであります。
また、検査等に要する医療資機材については、検体を採取する医療機関に対して、県で保管している個人防護具等を優先的に供給するなど、今後とも安定した検査体制の整備に努めてまいります。
次に、インフルエンザ予防接種についてでありますが、インフルエンザと新型コロナウイルス感染症は感染経路が同じ接触感染及び飛沫感染であり、臨床症状だけでは明確な区別が困難であります。このことから、発熱外来等における院内感染対策として、インフルエンザワクチンの接種によりインフルエンザ患者が減少することは意義が大きいものと考えております。このため、今冬に向けて市町村等と連携し普及啓発を行ってまいります。
◯43番(佐々木順一君)
国の求める報告につきましては、今は検討中ということでありますね。次の質問とも関係するのですが、恐らくこれも検討中になろうかと思いますが、一応通告しておりますので質問をさせていただきます。
同じように、先般、厚生労働省は医療崩壊を防ぐことと一般医療への影響を防ぐことを狙いとしまして、都道府県に対し、年齢構成など地域の実情に合った患者数を推計し、感染増加のスピードに合わせて段階的に病床をふやす計画を7月上旬までに作成し―まだ10日ぐらいありますよね。恐らく検討中の答弁だとは思いますが―下旬をめどに体制整備をするよう要請したとお聞きしておりますが、現時点における検討状況についてお伺いいたします。先ほどの件も含めてお尋ねいたします。
質問を続けます。
また、九つある県保健所の行政医師、所長は現在、専任が2人、兼務が3人、歯科医師が1人となっております。臨床医師と行政医師では越えがたい待遇の問題があることや、保健所法が地域保健法に改められたことに伴いまして、感染症対策がおろそかにされ、保健所機能が大きく低下させられてきたことは承知しておりますけれども、保健所強化を含め兼務の現状を改善すべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
そしてまた、あわせて地域医療構想の推進に当たりましては、感染症への対応が十分可能かとの視点も加え検討されるべきと思いますが、いかがですか。まとめてお伺いします。
◯保健福祉部長(野原勝君)
3点御質問いただきました。
まず、病床増に向けた検討状況についてでありますが、こちらも国からの通知を受けまして、これまでの国内感染状況等を踏まえました今後の医療提供体制の整備について、現在、精査、検討をしているところでございます。県では、重症度や特別の配慮が必要な小児、周産期、透析患者等に適切に対応するため、医療機関の役割分担を進めておりますが、そのほか、感染症病床の活用、簡易陰圧装置や人口呼吸器等の機器整備によりまして166床の確保を進めています。
また、現時点で、軽症者等の宿泊療養施設を1施設85室確保しておりまして、合計300室の確保に向けまして調整を進めております。
加えて、大規模クラスター等の発生も想定し、さらなる体制強化のため、医療機関または病棟単位で感染者を受け入れる重点医療機関の設置について検討を行っております。限りある医療資源を有効に活用しまして、本県における新型コロナウイルス感染症患者の受け入れと一般医療の両立ができる体制を確保するため、引き続き、関係機関と調整しながら医療体制の充実を図ってまいります。
次に、保健所の機能強化についてでありますが、保健所長の兼務につきましては、県では公衆衛生医師の確保のため募集を通年で実施するとともに、医師招聘活動を進めております。令和元年度は2名の応募があり、うち1名は本年6月に採用し、今後、大船渡保健所長として配属する見込みでございます。また、4月には若手医師1名を採用したところであり、今後は、医療、保健業務に幅広く従事、参画させ、公衆衛生医師としてキャリア形成を図っていくこととしております。
保健所の機能強化につきましては、公衆衛生医師の確保、育成に加えまして、新型コロナウイルス感染症患者が発生した場合、保健所の業務量がさらに増大すると想定されることから、県では、県または市町村を退職した保健師を各保健所に配置し、機能強化を図ったところであります。
国からは、感染ピーク時に対応できる病床の確保などとともに、保健所の体制整備についても検討を求められていることから、必要な検討を進めまして体制整備を図ってまいります。
次に、地域医療構想の推進と感染症対策についてでございます。
地域医療構想については、一般病床及び療養病床を対象にしており、感染症病床は直接の検討対象とされていないものの、今後、医療提供体制を構築していくに当たり、感染症への対応も重要な課題になるものと認識しています。
また、国では、厚生労働大臣が地域医療構想について、感染症対策も含めた弾力性のある医療提供体制の構築が必要であり、地方自治体と連携して検討を進めていく旨、国会で答弁していると承知しております。引き続き、こうした国の動向を注視しつつ、感染症対応も含めた地域医療のあり方について検討を進めてまいります。
◯43番(佐々木順一君)
それでは、経済対策に入ります。
コロナショックによりまして悪影響は業種、規模を問わず同時多発的に発生してきております。特に、外食、宿泊、興行などのサービス業は直接的な打撃を受けております。これらは中小企業や非正規雇用、フリーランスが多いと想定される職場であることから死活問題となっており、6月19日時点での岩手労働局がまとめたいわゆるコロナ解雇は312人を数え、今後においてもさらにふえる見込みとされております。
当分の間、雇用の維持と事業の継続が最優先課題となりますが、直接給付などの財政支援は継続して行う必要があると思います。あわせて、支援を必要とする期間をどのように捉えているのか、商工労働観光部長にお伺いいたします。
◯商工労働観光部長(戸舘弘幸君)
雇用の維持と事業の継続に向けた支援についてのお尋ねでありますけれども、新型コロナウイルス感染症対策としての新しい生活様式の実践のために、例えば飲食店におきましては、間隔を確保するために客席数を減らして営業することなどによりまして、構造的な収入の減少が懸念されるところであります。
県におきましては、家賃補助を実施しておりますほか、事業者が感染症対策や業態転換に取り組む場合の補助、宿泊事業者に対する支援金の支給について、さきの令和2年度岩手県一般会計補正予算(第3号)などで措置させていただいたところであります。
また、国におきましても、持続化給付金の支給のほか、雇用調整助成金の特例措置の拡充を図ったところでありますけれども、先ほど述べました、例えば飲食業や宿泊業、観光バス事業など、現在想定されている期間を超える支援が必要となる場合も十分考えられると認識しております。このため県といたしましては、国に対し必要な経済対策の長期にわたる実施を引き続き要望いたしますとともに、県としての支援を検討してまいります。
◯43番(佐々木順一君)
コロナ不況は需要と供給を収縮させ、消費、生産を停滞させております。消費、生産がなければ所得は減少することになります。所得が減少すれば需要は生まれず、需要がなければ生産もないという、まさに悪循環に陥っております。
最大の経済対策は、もちろんのことワクチンや有効な治療薬が開発されることでありますが、これが普及するまでは相当の期間を要するものと言われており、これに新しい生活様式も同じ期間を要せざるを得ないとなれば、当分の間、収入はよくて従来の2分の1しか見込めないことになります。当然、さまざまなイニシャルコストもかかります。
消費、生産、所得とも縮小を余儀なくされている経済状況であると思いますが、本県の経済をどのようにして建て直していくのか、考え方についてお伺いします。
◯政策企画部長(八重樫幸治君)
県では、県境をまたぐ移動が制限される中、これまで、買うなら岩手のもの運動など、官民一体となった取り組みのほか、県産牛肉の学校給食での提供など、地域内で経済を回す取り組みを展開してきたところであります。
また、観光についても、まずは県民の県内観光を促進するための取り組みを展開していましたが、6月19日の県境をまたいだ外出自粛の解除を受け、いわての新しい観光宣言を行ったほか、大規模なイベントについても段階的に取り組みを展開していくこととしています。
加えて、新しい生活様式への対応など、長期にわたり広く支援が必要な取り組みもありますことから、引き続き、国に対して必要な財政措置を働きかけながら、本県経済の活性化に向けて適切な対策を講じてまいります。
◯43番(佐々木順一君)
新型コロナウイルス感染症対策は、いわば人の命を救う対策であると思いますので、この災難を乗り切った方々は、間違いなく将来、事業をやる方あるいは一般の県民でも、まさに、また生き延びて納税者になるわけでありますから、ある意味では人に対する投資というような考え方で、ぜひ経済対策をとっていただきたいと、こう思っております。
それでは、新型コロナウイルス感染症対策の締めくくりに当たりまして、知事にお尋ねいたします。
知事は、初当選以来今日までさまざまな災害に直面してまいりました。岩手・宮城内陸地震、東日本大震災津波、そして、今回の新型コロナウイルス感染症への対応といったように、あらゆる大災害に対応されてきましたが、このような経験を持つ政治家は極めてまれではないかと思っております。
危機を克服する過程での社会学習は、必ず次の時代に履歴効果として作用します。貴重な体験を踏まえて、災害に向き合う心構え、また、得られた教訓などについて御披瀝いただきまして、新型コロナウイルス感染症対策関連の質問を終わりたいと思います。
◯知事(達増拓也君)
有事に対する心構えについてでありますが、かつてない危機にはかつてないような対策を行う必要があるということが、今回の新型コロナウイルス感染症にも当てはまると思います。これまで東日本大震災津波等さまざまな災害を経験したことを踏まえ、前例にとらわれないという視点で、例えば3月から4月にかけて感染拡大している地域との往来について注意を促すとともに、来県後2週間、もといた都道府県で要請されている自粛を続けるようお願いするなど、4月7日の国の緊急事態宣言に先駆けた対応をしたところであります。
第2に、答えは現場にあるという視点が重要で、例えば東日本大震災津波を契機に発足した、いわて感染制御支援チーム―ICATによる地域外来・検査センター設置の支援や高齢者施設等における施設内感染防止のアドバイスを行っており、また、感染拡大防止と社会経済活動の維持の両立のための支援事業を現場の声に基づいて策定しているところであります。
今後におきましても、前例にとらわれない、そして、答えは現場にあるという視点で、市町村やあらゆる主体と連携し、県民や事業者への支援を行ってまいります。
◯43番(佐々木順一君)
貴重な教訓をありがとうございます。
特に、これから経済対策は本当に喫緊の課題であると思います。今、経済と言えば大体エコノミーというのが普通の発想だと思うのですが、本来、経済は経世済民から来ており、世を治め民を救うと、これが経済の語源であります。経済対策がこれから大事になります。失業者が1%上がれば2,000人の自殺者が出るという統計もありますので、こういうことも頭の中に置きながら、ぜひ万全な体制で経済対策を進めていただきたいと思います。
次に、公文書の管理のあり方についてお尋ねいたします。
我が国の行政は、大宝律令以来、お上の言葉に象徴されるように、一部の人が支配して続けてまいりました。戦後においても、一定期間人治行政の色彩を残しておりましたが、90年代には行政手続法に基づいた2001年の行政機関の保有する情報の公開に関する法律、そしてまた、2011年に公文書等の管理に関する法律が施行されたことによりまして、健全な民主主義を維持、発展させる三つのツールを国民が手にしたところであります。
しかし、この数年、専ら国政においては公文書等の管理に関する法律の精神を裏切るような行為が連続して起きております。すなわち、古くは自衛隊日報の隠蔽問題、統計偽装問題あるいは森友、加計問題、桜を見る会の招待者名簿の問題もしかりであります。最近では、政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議や連絡会議の議事録の公開問題も批判を浴びておりますが、大事なことは全てブラックボックスの中という異常な状態が続いております。
民主主義の危機と言っても過言ではないと思いますが、知事は国の公文書の取り扱いについてどういう認識をお持ちかお伺いいたします。
◯知事(達増拓也君)
公文書の管理に対する認識についてでありますが、公文書は、行政の活動や歴史的事実の正確な記録として民主主義の根幹を支える基本的財産であり、また、歴史から教訓を学び、未来の国民に対する説明責任を果たすために必要不可欠な共有財産であると認識しております。
このため、公文書の管理に当たっては、公文書等の管理に関する法律やこれに基づく政令の規定に従い、適正に作成、保存、利用されるべきものと考えます。
◯43番(佐々木順一君)
それでは、知事の今の答弁を踏まえまして、総務部長にお伺いいたします。
県の公文書は1999年4月に施行された、知事が保有する行政文書の管理に関する規則によって管理されておりますが、これは何を目的に定められたものであるでしょうか。お答え願います。
◯総務部長(白水伸英君)
議員御指摘のとおり、知事が保有する行政文書の管理に関する規則でございますが、1999年4月に施行されたものでございます。同規則は、情報公開条例第37条2項に基づき制定をされてございまして、その目的は、知事が保有する行政文書の適正な管理を図ることとされているところでございます。
◯43番(佐々木順一君)
そのとおりなのです。いわば公文書等の管理に関する法律の精神は、古いわけですからね、1999年ですから。2011年度よりかなり前に定められたものでありますので、その公文書等の管理に関する法律の精神は入っていないということであります。
引き続き、部長にお伺いいたします。行政全般の事務作業はすべからく文書主義、すなわち公文書で動いております。この文書主義の精神は、2011年に施行された公文書等の管理に関する法律にも反映されております。その第1条の目的には、健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源と位置づけられております。また、主権者である国民が主体的に利用し得るものであるということや、行政の諸活動を現在及び将来の国民に説明する責務が全うされるようにすると定められております。
また、4条では、経緯も含め意思決定に至る過程や事務及び事業の実績を合理的に跡づけ、または検証ができるために文書を作成しなければならないとして、文書の作成義務も明記されております。
つまり、行政の諸活動は文書で記録しなければならないこと、その公文書は国民のものであって、現在だけではなく将来の国民への説明責任を果たすために作成、管理される必要があること。こうしたことによって民主主義の根幹を支えるものにしなければならないというのが公文書等の管理に関する法律の精神であります。
県の行政文書管理規則はこの精神が反映されていないと思いますが、改めて、部長からその認識をお伺いいたします。
◯総務部長(白水伸英君)
行政文書管理規則でございますけれども、先ほど御答弁させていただきましたが、行政文書の適正な管理を目的とし、事務処理に当たっては、処理内容等を正確かつ簡明に記録をした行政文書の作成を義務づけているというところでございます。
また、同規則の制定の根拠となっております情報公開条例におきましては、その目的を県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするということで規定をしておるところでございます。
行政文書管理規則におきましては、議員御指摘のとおり、公文書等の管理に関する法律の精神を明示的に規定はしていないものの、公文書等の管理に関する法律の精神であります公文書は、国民共有の知的資源と同様の趣旨に立つものであるとも言え、この考え方に基づき文書管理制度及び情報公開制度を構築し、運用をしているところでございます。
◯43番(佐々木順一君)
規則は内部で決めるわけでありますので、私が申し上げたいのは、今、国のほうで公文書管理については危機的状態に置かれており、これをそのまま放置すれば、県や市町村も将来、この国のやり方を模倣するおそれも否定できないと思っております。一方、県の行政文書管理規則は公文書等の管理に関する法律以前のものであります。その精神を酌みながら規則で運用している、そしてまた、情報公開条例とも一体として取り組んでいるという総務部長の答弁でありましたが、結論的には、県の裁量でどうにでも変えられるということであります。
私も、今の執行部であれば、今、総務部長が答弁したように、公文書等の管理に関する法律の精神を踏まえて的確に対応していくということでありますが、将来、どういう方が知事になるかわからないわけでありますから、思いついたら吉日で、これを裁量のきく規則ではなく、条例に改めるべきだと私は思っております。これは、我々岩手県政に携わる者の未来に対する責任であると思いますが、条例化について部長の御認識をお伺いいたします。
◯総務部長(白水伸英君)
本県では、先ほども御答弁させていただきましたけれども、これまで行政文書管理規則及び情報公開条例等に基づいて適正に文書が作成、保存、利用をされ、公文書等の管理に関する法律と同様の趣旨に沿った運用が行われてきたものと認識をしております。文書管理事務につきましては、今後、地方自治法に基づく内部統制制度を導入いたしまして、さらに、適正な事務処理等の確保を図ることとしております。
県といたしましては、将来にわたり県民に対する説明責任を果たすことができるよう、内部統制による文書管理事務の適正性の評価などを踏まえながら、議員から今御指摘がございました条例化につきまして研究をしていきたいと考えております。
◯43番(佐々木順一君)
いい言葉ですね、研究。答弁の言い回しとすれば、私も答弁する立場だったらそのように答弁します。
ただ、一口に研究と言っても、それよりもまず、執行機関である岩手県行政の筆頭にある総務部がいつから研究機関になったのか、それはそれとして。まず研究と言っても広いわけでありまして、学術的研究からいきますと、一生かけて研究をしても答えが見出せない研究もあります。一方において、夏休みが間もなく来ます。学校から子供たちに出される課外研究は、休みが終われば発表しなければならない。前者は無期限型、後者は期間限定型であります。
それでは研究期間を部長はどのように定めているわけでしょうか、お答えを願います。
◯総務部長(白水伸英君)
研究期間ということで、これはさまざま行政が直面する課題が複雑多様化しております。そういう意味で、各自治体で今さまざまな取り組みがされておりますけれども、しっかりと課題を分析し、そして、新たな政策に生かしていく。そういう意味では、新型コロナウイルス感染症対策に求められているのはまさにその一例であると思っておりますけれども、そういった複雑多様化する行政をより的確に進めていくためにも、さまざまな制度の研究あるいは検討も含めて総合的にやっていく必要があるものだと考えております。
◯43番(佐々木順一君)
まさか答えが出るまで研究し続けるというわけではないと思いますが、これも後で御答弁ください。
それから、研究という言葉は、研ぎ澄ましてきわめることだと思います。なぜ研究をしなければならないのか、もう一回具体的に、研究のテーマと、一生かけて研究するわけではないと思いますので、おおむねの目安か何らかを明示していただければありがたいと思います。御答弁をお願いします。
◯総務部長(白水伸英君)
この条例化の研究に当たりましてはということでございますけれども、行政のこれまでの取り扱いの継続性ということもありますので、そこはまずしっかりと押さえた上で、先ほども御答弁申し上げましたけれども、行政が複雑多様化していっている中でさまざまの課題も見えてきております。そういったものをしっかりと克服して新しい制度をつくっていくことが重要だと考えております。
そういった意味で、これは地方自治法に基づく制度ということで、ことしから内部統制制度ということでも始まっております。これは今までは財務事務ということでやっておりますけれども、さらに、文書管理事務についても進めていくということにしております。これは国の公文書の管理の中でも、各省がやる文書について内閣府がある意味横串を刺すような形で内部統制をしているというふうな仕組みを設けておりますので、そういったことも参考に、まずは取り組みまして、その結果などを評価いたしまして、そして、条例化ということで他県でもさまざまな事例がございます。こういったものもしっかりと分析をして、新しい制度化ということでつなげていければと考えております。
◯43番(佐々木順一君)
なかなか期間を言いませんね。それでも、知事のもとでやるわけでありますから、任期中にやると、このように勝手に理解しております。
公の研究の成果は必ず社会に還元しなければならないわけです。この場合、岩手県政に研究の成果を還元しなければならないと思います。ぜひ、大いに研究をしていただいて、速やかにその成果についてお示しいただくことを御期待申し上げたいと思っております。
それでは、関連質問を通じまして研究材料を提供させていただきたいと思いますので、総務部長は、研究者になったつもりで私の質問をお聞きいただければと思います。聞いて、答弁をお願いします。
他県でもありますが、条例化に当たっては原則として公文書等の管理に関する法律を踏襲するものと思います。国は専門的第三者的見地から調査、審議を行うための機関である公文書管理委員会が置かれております。公文書ガイドラインの審議など公文書等の管理に関する法律の運用に関し意見を提言する機関がありますが、県においてもこの第三者機関を条例に位置づけるべきと思います。
また、歴史的価値を有する公文書のカテゴリーも設けるべきであります。歴史的な価値のあるなしについては、当然のことですが、第三者委員会で審議されるわけであります。
さらに、できれば公文書館もつくるべきと思いますが、予算上の問題があるのであれば、当面、歴史的価値を有する公文書を永久保存し、公開請求があった場合は、時の経過を考慮して開示する情報を広げるなど、公文書館機能を行政組織の中につくることは現実的選択肢の一つであると思いますが、これらについてどうお考えなのか、研究者総務部長の御答弁をお願いいたします。
◯総務部長(白水伸英君)
今、議員から御指摘いただきました、まず第三者機関の設置、歴史的価値を有する公文書のカテゴリーの設定等につきましては、国の公文書等の管理に関する法律のほか、他県においても同様の事例がございますことから、それらを参考に検討していきたいと考えております。
また、歴史的価値を有する公文書の保存や利用といった公文書館機能につきましては、現在、盛岡地区合同庁舎にあります文書保存庫において一部機能が担保されているところでございますが、今後、発災から10年を迎える東日本大震災津波の関係文書を整理し、その保存や利用を図るなどの必要があることから、国や他県の事例なども参考としながら、公文書機能の強化について検討していきたいと考えております。
◯43番(佐々木順一君)
公文書の最後に、悩ましい問題を申し上げたいと思います。
公文書等の管理に関する法律によると公文書の定義は、職員の職務上作成、取得、二つ目、組織的に用いる、三つ目、現在の保有の3点を満たすものとされておりますが、これを踏襲されると思いますが、問題は、経緯を含めた意思決定に至る過程や事務及び事業の実績と合理的に跡づけまたは検証可能をどう担保するかということであると思います。
国の森友、加計問題でも、上司への説明や報告等に用いるために作成した備忘録、決裁文書の起案前の職員の検討段階の文書などが政策決定過程を知る上で極めて重要であることが証明されましたが、これらは組織的に用いるということに該当しないことから、個人的メモとして取り扱われております。
真実は細部に宿るという言葉がありますけれども、今の法律のたてつけは何を行政文書にするかを選別する運用になっておりますが、ガイドラインの作成に当たっては、あるいは条例化の作成に当たっては、あるいは、その前段の研究の過程の中で、公務員が業務上作成する文書は原則として全て行政文書として、例外的に個人資料とするような制度設計も選択の一つと考えられますが、あわせて部長の見解をお伺いいたします。具体的になりますから、まず、お考えをお聞きいたします。
◯総務部長(白水伸英君)
国におきましては、個人的メモあるいは備忘録等のうち、何が行政文書に当たるのかにつきましては、文書の作成、取得、利用の状況、保存または廃棄の状況等を総合的に考慮して、実質的に判断する必要があるものとされているところでございます。
一方で県におきまして、個人的メモや備忘録等の取り扱いにつきましては、議員御指摘の点も踏まえまして、国や他県の事例も参考としながら、行政文書の範囲をさらに適切に設定することによりまして、県民の知る権利の尊重に努めてまいりたいと考えております。
◯43番(佐々木順一君)
公文書関係はこれで終わります。よろしくお願い申し上げます。
次に、国が地方自治体に求める計画の策定についてお伺いいたします。
2000年4月の地方分権一括法の施行から20年が経過いたしましたが、近年、国が地方自治体に計画策定を求める法律の規定が増加しております。すなわち、何々を定めるものとするという義務規定、あるいは、何々を定めるよう努めなければならないという努力義務規定、さらには、何々を定めることができるといった任意規定でありますが、岩手県政において、現在、国から求められている計画策定はどのくらいあるのか、この三つの区分ごとにその件数をお示しいただきます。
あわせて、地方分権一括法施行前の比較についてもお伺いいたします。
◯政策企画部長(八重樫幸治君)
現時点で県が策定済みの約200件の計画のうち、法律に基づき策定しているものは107計画となっており、全体の約54%を占めています。この107計画のうち、義務規定に基づくものが51計画でほぼ半分を占めており、このほか、努力義務規定に基づくものが22計画、任意規定に基づくものが34計画となっています。
また、2000年4月の地方分権一括法施行前との比較では、107計画のうち、地方分権一括法施行前に策定されたものは35計画、施行後は72計画となっており、施行後に策定されたものが全体の約67%を占めています。
◯43番(佐々木順一君)
かなりふえていますね。計画策定が関連の補助金交付などの条件になっているケースもあります。象徴的なものは、地方創生を推進するまち・ひと・しごと創生法に基づく地方版総合戦略であります。これは努力義務となっておりますが、計画策定が補助金交付の前提となっております。中には、地方債発行などに係る要件も備えたものもあります。
このような計画は何件存在するのか、先ほどお尋ねした区分ごとにお示し願います。
◯政策企画部長(八重樫幸治君)
現在、県が法律に基づき策定している107計画のうち、計画の策定が補助金等の交付の前提になっているものは食育基本法に基づくものなど36計画となっており、義務規定に基づくものが15計画、努力義務規定に基づくものが5計画、任意規定に基づくものが16計画となっています。
また、地方債発行の要件となるものは、まち・ひと・しごと創生法に基づくものなど4計画となっており、義務規定に基づくものが2計画、努力義務規定に基づくものが2計画となっています。
◯43番(佐々木順一君)
かなり窮屈ですね。これは私の見解でありますが、計画策定が財政措置の条件となっておることが明らかになったところでありますが、私から言わせれば、とにかく計画の必要性よりも、まず財源を確保しなければならないというのが頭の中で先行されるのではないかなと思っております。
それはそれとして、よしあしは別にして、財源確保が大変な全国の地方自治体でありますので、これは無視することができないことであるとは思いますが、一方において、行政改革で職員を減らしてきております。ぎりぎりの職員体制であると思っております。このままでは地方課題に向き合ったり、県独自の施策に取り組む余裕がなくなるおそれもあると思います。何よりも分権に逆行していると私は思いますが、そして、改善しなければならないと思いますが、部長の御認識はどうでしょうか、お伺いいたします。
◯政策企画部長(八重樫幸治君)
法律に基づく計画については、地方分権一括法施行以来、策定数がふえているところであり、その策定に当たり検討組織の立ち上げや有識者会議における検討を初め一定のプロセスを踏む必要があることから、職員体制の充実も必要となります。また、計画の策定が国の補助金交付や地方債発行の要件となるなど、その策定の要否について県の裁量の余地が乏しいものも一部存在しており、地方の裁量の確保に十分配慮することが必要であると認識しています。
一方で、既に相当数の計画が策定されている中で、例えばいわて県民計画や岩手県ふるさと振興総合戦略に盛り込まれた該当箇所をもって策定したものとみなすといった取り扱いも可能と考えており、国に対し、そうした柔軟な運用を求めていきたいと考えております。
◯43番(佐々木順一君)
それでは、改めて知事にお伺いいたします。
2000年4月の地方分権一括法の施行により国が地方自治体を指揮、命令することは禁止されました。過去の通達も全て効力を失っております。できるのは通知を出すことでありますが、通知は国から地方自治体に対する単なる技術的助言にすぎないと思っております。機関委任事務もなくなり、法律による委託事務以外は全て自治事務となりました。何でも自由に決めることができるようになったわけでありますが、実態は今の御答弁のとおりであります。平たく言うと、財源を餌にして国が政策誘導を行っていると、必要以上に地方公共団体を拘束しているとも言えると思います。このことについて知事はどのような問題意識を持っているのかお伺いいたします。
また、今の政権には地方分権に全く関心がないので期待はできないと思いますが、全国の自治体の首長のほとんどは、この点について問題意識を抱えているものと思っております。特に、コロナ禍は、一極集中から多極化へ、中央集権から地方分権へ、この必要性を改めて示唆しておりますが、国が地方に義務づけているこの手法を早急に改善すべきと思いますが、知事の御認識等をお伺いいたします。
◯知事(達増拓也君)
国の計画策定による政策誘導についてでありますが、国、地方の本来のあり方を踏まえ、国は国としての役割に専念する一方で、住民に身近な行政はできる限り地方公共団体に委ねていくという地方分権改革をしっかりと推進していくことが重要であります。したがって、国が制度の創設、拡充等を行うに当たっては、地方の実情や裁量の確保に十分配慮する必要があり、補助金や交付金の配分を前提として一律に計画策定を地方自治体に求めることは、極力避けるべきと考えます。
このことは全国知事会でも問題視しており、地方みずからの判断で地域の実情に沿った施策が十分展開できるよう、国と地方の協議の場の活用を含め、全国知事会等と連携し、国に制度改善の要望を行っているところであります。
現在、全国知事会に設置された地方分権改革の推進に向けた研究会において、国による計画策定等の義務づけの見直しについて議論されており、その議論も踏まえ、引き続き、国から地方への税財源の移譲などを含め、全国知事会等と連携して国に対し強く働きかけてまいります。
◯43番(佐々木順一君)
市町村の基礎自治体も同じような悩みを抱えて、多分、都道府県よりももっと問題意識を持っていると思いますので、基礎自治体がある程度自由に活動できるような状況をつくっていただくためにも、全国知事会が先頭を切ってこの改善にぜひ取り組んでいただきたいと思っております。
こういう問題は毎年のように起きるわけでありますが、残念ながら、時間がたてば熱意が冷めまして、また振り出しに戻っている。分権の20年間を振り返ってみれば、常にさいの河原の石積みみたいなもので、積み上げていったらまた崩れるというのが地方分権の実態ではないかと思っておりますので、ぜひ実効性ある取り組みを期待申し上げたいと思っております。
次に、昨年の2月定例会におきまして、県議会が全会一致で承認したいわて県民計画(2019~2028)についてお伺いいたします。
県においては、大事な初年度を終えまして、一定の検証を行っているものと思います。いわて幸福白書の作成は一つの成果であると思いますが、まずは一つの区切りとして、1年間この計画を推進してきたわけでありますので、1年を終えて、総括的な評価についてお伺いをしたいと思います。これはみんなで賛成したわけでありますから、議会の一つの義務でもあります。
それから、今般の新型コロナウイルス感染症の衝撃は、全ての経済社会の基本構造を直撃しております。歴史を振り返ってみるまでもなく、感染症は一つの文明を消滅させたり、間接的に戦争も終わらせるなど、常に歴史を転換させてきております。今回も例外ではないと思いますし、さまざまなシステムの見直しは不可避であると思っております。そういうことから、アフターコロナとかいろいろな標語が生まれてきていると思いますが、それはそれとして、いわて県民計画といえども例外ではないと思います。
世界を巻き込んだ国難の中で、改めていわて県民計画(2019~2028)を読み直してみました。関連指標の中には、当然ながら達成目標の時期に影響が出るものの、基本目標、基本政策を含め、この計画を貫いている精神は、今まで以上に県民の行動指針になるのではいなかと私は思っておりますが、知事の御認識をお伺いするものであります。
◯知事(達増拓也君)
いわて県民計画(2019~2028)についてでありますが、計画では、東京一極集中を是正し、より地方の人々の暮らしや仕事を起点とする政策を組み立てていくことが重要という認識のもと、県を初め県民、企業、市町村など地域社会を構成するあらゆる主体が、ともに支え合いながら岩手県の将来像を描き、その実現に向けて行動していくことを計画の理念に掲げております。
また、第4次産業革命技術の活用などにより新たな価値やサービスを創造していく11のプロジェクトを盛り込んでおりまして、10の政策分野とあわせて、お互いに幸福を守り育てる希望郷いわてを基本目標としております。
このような方向性は、今般の新型コロナウイルス感染症対策やいわゆるアフターコロナの議論にも相通じるものであり、いわて県民計画の目指す方向に揺るぎがないことを心にとめながら計画を推進してまいりたいと思います。
いわて県民計画に盛り込まれた取り組みの中には、延期や縮小、中止となる可能性があるものも含まれておりますが、生活、なりわい、学びの場に合った感染症対策の徹底を前提に、取り組みの見直しや前倒しも行いながら、臨機応変に対応し、お互いに幸福を守り育てる希望郷いわての実現に向けてしっかりと取り組んでまいります。
◯43番(佐々木順一君)
それでは、いわて県民計画(2019~2028)に関連しまして、再度、知事にお伺いいたします。
いわて県民計画を支える政策の一つに、岩手県ふるさと振興総合戦略があります。第1期では、岩手で働く、岩手で育てる、岩手で暮らすの3本柱でありましたが、第2期の実施に当たりましては、新たに、岩手でつながるが追加され、今、4本柱となっております。
一方、本県の初等中等教育施設、大学等高等教育施設は整備が進んでおり、さらに、令和4年8月には世界に通用するリーダーの人材育成の一環として、英国名門のハロウインターナショナルスクールも開設予定となるなど、多彩な学びの場が整備されつつあります。ILCの誘致が決まれば、県立大学を含めてそれなりの体制をとらなければならないということになると、これにさらに厚みが増してくるものと思っております。
ついては、岩手で学ぶを追加して5本柱にすべきと思いますが、いかがでしょうか。
なお、私が言う、この学ぶというその範囲は、教育のみ指すのではなく、いわば岩手県全体を教材とした生涯学習という位置づけで、岩手で学ぶというものを追加したらどうかという御提案でありますが、知事の御見解をお伺いいたします。
◯知事(達増拓也君)
岩手県ふるさと振興総合戦略の柱立てについてでありますが、議員御指摘のとおり、ふるさと振興のかなめは人であり、生涯学習も含めた学びは、岩手県のふるさと振興において大変重要な要素と考えます。
きょう6月29日は岩手県世界遺産の日でありまして、平泉が世界遺産登録された日でありますけれども、この平泉は、短歌の分野において西行法師が、そして、俳句の分野において松尾芭蕉が、それぞれ平泉を訪れることで自分たちの道を完成させたということで、生涯学習も含めた学びには、岩手のそのような歴史的、文化的背景も生かしていかなければならないと考えております。
第2期岩手県ふるさと振興総合戦略におきましては、4本の柱の一つである岩手で暮らすにおいて、ふるさとの未来を担う人づくりを掲げ、児童生徒の知育、徳育、体育の推進、多様なニーズに応じた特色ある私学教育の充実、岩手と世界をつなぐ人材など、地域に貢献する人材の育成などの取り組みを進め、岩手の将来を担う子供たちを育て、岩手を牽引する人材を育成することとしております。
また、議員御紹介のハロウインターナショナルスクールの令和4年の開設は、岩手が世界有数の学びの場として選ばれたことを意味し、教育環境の一層の充実や海外との交流促進による多文化共生の地域づくりなど、本県のさらなる地域振興につながるものと考えます。
第2期岩手県ふるさと振興総合戦略は本年3月に策定し、いわて県民計画(2019~2028)の人口減少対策に関係する分野を推進するための戦略と位置づけ、今年度からいわて県民計画と一体的に推進しており、こうした大きな環境変化を的確に捉えながら、いわて県民計画の第2期アクションプラン策定に向けた検討や岩手県ふるさと振興総合戦略への反映を進めてまいります。
◯43番(佐々木順一君)
さっきの公文書より随分踏み込んだ答弁と受けとめました。
縄文遺跡も世界遺産になる可能性が高いわけでありますから、縄文時代は争いのない歴史であったということでありますので、これもまた一つの岩手県が誇る大きな財産であろうと思っております。ここから学ぶものも大いにあると思いますので、ぜひ積極的に御検討いただいて、しかるべき時期に岩手で学ぶを何らかの形で取り上げていただければ、質問したかいがあるということであります。
最後に、ILCの実現についてお伺いいたします。
昨年3月の日本政府による関心表明以降、国内外の動きが進展しております。本年2月のICFA―国際将来加速器委員会の会議で、文部科学省がこれまでの取り組み状況を説明し、ICFAからは国際推進チームの設置などが提言されました。
また、先般成立した復興庁設置法等の一部改正に際しましては、衆参両院でILCの誘致に関する附帯決議がなされたところであります。
今月19日には、次期欧州素粒子物理戦略が公表されました。これまでの戦略では、ILCに関して、ヨーロッパからの参加を可能とする日本の提案を期待するとしていたものが、今回、ILCは、戦略に適合する、欧州は協働を望むとされ、前回よりも積極的な姿勢があらわれたものと思っております。
いわば、これにより外堀が埋められたものと私は思うものでありますが、さらに、きのう、おとといの新聞では、詳細は省きますが、KEK―高エネルギー加速器研究機構が想定日程も公表しております。
つきましては、県では、今回の欧州戦略とKEKの想定日程をどのように受けとめているのか、ILC実現に向けた今後の取り組み方針とあわせお伺いいたします。
◯知事(達増拓也君)
ILCの実現についてでありますが、欧州素粒子物理戦略は、ヨーロッパの研究者コミュニティーがヨーロッパ内外の研究計画を議論し、今後優先して取り組む研究戦略を策定するもので、23カ国で構成されるCERN―欧州合同原子核研究機関に参加する各国の政府代表と研究者で構成させる理事会で決定されます。
今般公表された戦略では、議員御指摘のとおり、ILCについてこれまでの戦略よりも積極的な姿勢が示されており、国際プロジェクトであるILCの実現に向けて極めて意義深いことと感じております。アメリカからの支持も表明されているところであり、今後、ILC建設に向けた経費分担など国際協力に関する具体的な協議の進展が期待されます。
県といたしましては、国内外の動向に臨機に対応し、超党派国会議員連盟や関係団体などとの一層の連携を図りながら、政府への要望や国民理解の増進に取り組むとともに、現在設立が進められている国際推進チームの活動を見据えた建設候補地としての取り組みを関係自治体や研究者等と連携して進めてまいります。
◯43番(佐々木順一君)
それでは、ILCどうぞよろしくお願いいたします。
以上で通告の一般質問は終わります。
先ほど総務部長から、公文書管理関係については条例化を目指して研究していくと、こういうお話がありました。岩手県議会の公文書関係はやはり同じように規則になっておりますので、執行部と対等の関係にある議会でありますので、抑制均衡の関係にある議会でもありますので、ぜひ、議長のもとで研究に着手していただくように御努力をお願い申し上げまして、私の一般質問を終えます。ありがとうございました。(拍手)
◯副議長(中平均君)
以上をもって佐々木順一君の一般質問を終わります。